artscapeレビュー
あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
2016年09月15日号
会期:2016/08/11~2016/10/23
3回目のあいちトリエンナーレ、今年は芸術監督に港千尋を迎え、「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマに、名古屋だけでなく岡崎、豊橋でも開催。ぼくは日帰りのため名古屋しか見ていない。テーマの「キャラヴァンサライ」とは旅の家、隊商宿のこと。芸術とは未知への旅のことだから、さまざまな国から人々が集まる芸術祭をキャラヴァンサライと位置づけ、さらなる旅の英気を養おうではないか、ということらしい。テーマというより意気込みですね。
まずは名古屋市美術館から。沖縄の建物の壁に残る砲撃跡をフロッタージュした岡部昌生の作品をすぎると、ジョヴァンニ・アンセルモ、小杉武久といった懐かしいアーティストの名前も。地下のライ・ヅーシャンは、ほぼ正方形の展示室の床にゴミや道具類を散りばめ、壁を一周できるように高さ1メートルほどの狭い通路を設置。高みの見物ともいえるし、観客と展示物の立場を逆転させたともいえる。美術館近くのケンジタキギャラリーでやってる「イケムラレイコ展」を見て、旧明治屋栄ビルへ。古いビルの各フロアに5人が展示。おもしろいのは6台の強力な照明を上向きに設置し、上から水滴を垂らして水蒸気を発生させる端聡のインスタレーション。照明器具がちょうど目の高さにあるので内部が見えず、横から見ると鍋でなにか煮てるのかと思った。繊維問屋街の長者町では空きビルを使ったプロジェクトを展開。白川昌生は問屋街で扱っていたラクダのシャツに着目し、ラクダと日本の関係史を掘り下げている。ほかに巨大なハリボテのシャチホコも。その上では佐藤翠が鏡に描いたクローゼットの絵を展示していて、その華麗さは一見場違いにも感じるけど、これも服つながりだ。別のビルでは壁に大きく「アートより友人」と横断幕が張られていたが、これはもしかして地域アートの真髄を突いている? 昔ながらの純喫茶クラウンでは、今村文による植物モチーフの作品が壁にインスタレーションされている。見るだけでもいいのだが、なにしろ暑いのでアイスコーヒーでひと休み。考えることはみな同じらしく、ぞくぞくと入ってくる。
最後は愛知芸術文化センター。ここでは大きな空間に1組ずつゆったり見せている。とりわけ広大なスペースを使っていたのが大巻伸嗣で、体育館ほどの広さの展示室の床に顔料で花模様を制作。花模様は中央の柱から同心円状に広がっていて、観客は隅のほうに渡した橋の上から見るのだが、会期終盤には直接床の上を歩いてもらうそうだ。この大巻以外は引っかかる作品が少なく、つい素通りしてしまう。いいかげん疲れていたというのは差し引いても、前2回に見られたようなインパクトの強いスペクタクルな作品が激減し、よくも悪くもキマジメな作品が多かった印象だ。午後6時からのレセプションパーティーにも出てみた。河村たかし名古屋市長らトップが熱心なのはけっこうだが、ドラゴンズもグランパスも低迷してるからって、トリエンナーレに過剰な期待をかけるのはどうなんでしょうね。
2016/08/10(水)(村田真)