artscapeレビュー

開発好明:中2病展

2016年09月15日号

会期:2016/07/16~2016/09/19

市原湖畔美術館[千葉県]

某女子大の教え子3人と千葉県の高滝湖畔にピクニック。東京駅から高速バスで市原鶴舞に出て、路線バスに乗り換えて湖畔美術館へ。ここは2年前の「中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス」の拠点になったところ。そのとき《モグラTV》で人気を博したアーティスト、開発好明の個展が開かれている。タイトルの「中2病」とは、性や自我や社会意識に目覚める思春期特有の背伸びしがちな言動を自虐的にいう造語で、そういえばぼくも中2のころっていちばん思い出したくない時代だったなあ。同展は日替わりのイベントやサービスがあり、今日は中学生の格好をしていけば入場無料になるというので、制服姿で来るように指示したら、みんな本当にセーラー服とかで来たのでタダで入れた。ちなみにぼくも黒いズボンに白いシャツ姿。全員で写真を撮られ、どこかにアップされた模様。
会場には巨大なポロック柄シャツやビュレン柄パンツ(まるでカーテン)、校長の顔写真に落書きした《らくがお校長先生》、墨が塗られた文章を想像で復元する《黒塗りテスト》など、おもに学校ネタの新旧インスタレーション約50点が並ぶ。来場1万人目の人にはグァム旅行が当たる! というサービスもあるが、会期なかばにして1,530人ほど。1万人にはほど遠い(もちろん1万人も入らない前提での企画だが、万一入ったら嬉しい誤算)。どの作品もポップでダサくて手づくり感にあふれ、幾何学的でオシャレな美術館に対する批評になっている。それは館外の作品により顕著で、エントランス前には竹を舟形に組んだインスタレーションの下に洗濯機が置いてあり、洗濯物が干してある。これは《洗濯船》という作品で、自由に服を洗っていいというが、だれがこんなとこで服を脱いで洗濯するか。ちなみに「洗濯船」とは、ピカソやモディリアーニがアトリエを構えていたというパリの伝説的な安アパート「バトー・ラヴォワール」のこと。前庭にはやはり角材を組んでハンガーを吊るした《青空クローク》が設置されてるが、だれがこんなとこに服や荷物を預けるか。これらは夏休みにピクニックがてら美術館を訪れるスノッブなプチブルへの強烈な批判であろう。いやー痛快っつーか。帰りは再び高速バスで東京駅に出て、近くの飲み屋に入ったら年齢を確認された。そうだ、みんな中学生の格好してたんだ!

2016/08/13(土)(村田真)

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