2021年03月01日号
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artscapeレビュー

動物園にエイゾウがやってきた!

2009年11月01日号

会期:2009/08/29~2009/11/29

横浜市立野毛山動物園[神奈川県]

10月末日から催される「ヨコハマ国際映像祭2009」のサテライト企画。動物園の園内で、泉太郎、野村誠+野村幸弘、SHIRABROSの3組のアーティストがそれぞれ作品を発表した。鍵盤ハーモニカ奏者の野村誠は、檻のなかの動物たちに向けて演奏してまわり、その様子を撮影した野村幸弘による映像を、園内に設置された古いバスのなかで発表した。動物という人類にとって完全な他者を相手にしたコミュニケーションのほとんどは当然成就することはないが、楽器に興味を示した動物と協演しているように見える瞬間がないわけではない。けれども、そのような期待を込めて動物の一挙一動を見守るということじたいが、動物の「生」をいつも以上に丁寧に観察することになっていることに気づかされる。音楽という手段が動物園という目的にかなうことを実証した作品だといってもいい。一方、動物園という目的とはまったく無関係に作品を発表したのが、泉太郎。「シロクマの家」を全面的に使った映像インスタレーションで、ふだん観客がシロクマを鑑賞するための舞台はもちろん、その外周に掘られたプールの底からバックステージや檻の中まで、ふんだんに空間を使い込んだ展示で、じつにおもしろい。先ごろ群馬県立近代美術館で発表された《貝コロ》と同じ発想でつくられた新作は、サイコロを振って出た目の指示に従いながら、さまざまなコマを進めていく遊びだが、撮影されたシロクマのステージと同じ場所で見せられ、かつコマの残骸が現場にそのまま残されているため、映像の中と外がリンクしているのがわかる。ただ、コマとして使ったプラスティック製のキャラクターをガムテープでぐるぐる巻きにしたり、絵の具をぶっかけたり、動物園に期待されている子どもの情操教育にとってはあまり歓迎されないような作品も多い。その意味では動物園という場にはまったくそぐわないが、しかし、そうした破壊的な行為が子どものリアルな心情に訴えかけることもまた事実である。野村と泉の作品は、それぞれ異なるアプローチで、動物園という場にアートを持ち込むことに成功した。

2009/09/23(水)(福住廉)

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