artscapeレビュー
GEISAI#13
2009年11月01日号
会期:2009/10/18
Kaikai kiki 三芳スタジオ[埼玉県]
アーティストの村上隆が仕掛ける「GEISAI」の13回目。場所を臨海エリアの東京ビッグサイトから、埼玉県内にあるカイカイキキの倉庫に移し、規模も大幅に縮小、審査員による審査や賞の授与もなく、しかもテーマは「貧」。日本の若きアーティスト予備軍を「富」へと先導(扇動)してきた本展にも、昨年来の世界的な経済不況のあおりが直撃したということなのだろうか。とはいえ、次回は再び臨海部に立ち返るらしいので、これは根本的な方向転換などではなく、絶えず変動する経済状況にフレキシブルに対応する「戦略」の現われと考えるべきだろう。だが片田舎の会場には文字どおりどこかの美大のようなうら寂しい雰囲気が立ち込めており、等身大の原点に立ち返ったといえばそうなのかもしれないが、世界のアートシーンに打って出るという華々しい物語の片鱗はどこにも伺えず、そのあまりの開き直りぶりに愕然とせざるを得ない。世間が貧困問題に注目しているからといって、それをそのままテーマとして持ち出してみたところで、そこにいったいなんの「芸」があるのか。むしろ、そうした貧しい時代だからこそ、逆説的に「富」への夢に現を抜かしながら、やせ我慢を貫き通すことが、村上隆の強みではなかったか。「GEISAI」というプロジェクトが、表面的な印象とは裏腹に、じつに現実的で凡庸な、したがってあえて「アート」というほどでもない試みだったことが露呈したのが、本展である。
2009/10/18(日)(福住廉)