artscapeレビュー

伊佐治雄悟 展 ボトル/bottle

2009年11月01日号

会期:2009/09/28~2009/10/03

ギャラリイK[東京都]

伊佐治雄吾は、凡庸な日常用品を加工することでその美的な側面を浮き彫りにするアーティストだ。ボールペンの先端に熱を加えて、まるでガラス細工のように丸く膨張させたり、洗剤のボトルの表面をカッターで念入りに切り刻み、幾何学模様を描き出しながら分解したり、なんでもない素材が隠し持っている美しさを巧みに引き出している。切り刻まれたボトルは奇妙に伸張しているが、それは可塑性のあるプラスティックにちがいないとはいえ、じっくり見ていくと天に向かって育ちゆく植物のようにも見えてくるから不思議だ。人工的で無機質な素材にすら有機的な生命を感じてしまう、わたしたち自身の偏った癖を体現しているかのようだった。

2009/09/28(月)(福住廉)

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