artscapeレビュー
長者町プロジェクト2009
2009年11月01日号
会期:2009/10/10~2009/11/15
長者町繊維卸会館ほか[愛知県]
来年の夏に開催が予定されている「あいちトリエンナーレ2010」のプレイベント。繊維卸街の空き店舗などを会場に、9組のアーティストが作品を発表した。街中のアートプロジェクトとしては比較的小規模だとはいえ、空間の特性を意識しながら、その隙間を使いこなす作品が数多く、見応えがあった。淺井裕介は高層ビルの外壁に身を乗り出してマスキング・プラントを描き出し、また室内の壁面にも色とりどりのガムテープで生い茂る植物を描写した。各地の子どもたちにスプーン曲げを教える映像作品で知られる山本高之は、建物の奥の暗がりで映像を見せることで、その謎めいた秘術の神秘性を効果的に演出していた。KOSUGE1-16は、繊維卸問屋の店内に同地から集めた布団や布で組み上げた山車を発表し、石田達郎は白い粘土で構成した物体を集積した都市風景を廃屋のいちばん日当たりのよい空間で展示することで、その白さを美しく照らし出していた。なかでも、抜群だったのが斉と公平太。あいちトリエンナーレ非公式のキャラクター、「LOVEちくん」と「ARTくん」のオリジナルグッズショップを勝手に開店した。店内にはぬいぐるみや缶バッジなどおびただしい数のグッズがじっさいに販売され、そのなりふり構わない商魂が「食えないアーティスト」に由来していることをマンガで表現していた。大規模な展覧会を逆手にとって自分の食い扶持を確保しようとするやり方は、所沢の「引込線」における増山士郎と同じく、ゼロ年代後半のひとつの潮流である。だが、本展の後参加した「GEISAI#13」で村上隆(同姓同名)の『マイベストゴルフ』も展示していたように、斉とには増山とは異なる、機知に富むたくましさがある。
2009/10/10(土)(福住廉)