2021年03月01日号
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artscapeレビュー

城戸孝充 展

2009年11月01日号

会期:2009/09/10~2009/10/04

Gallery 21yo-j[東京都]

彫刻家・城戸孝充の新作展。高い天井を誇る会場に入ると、巨大な水槽の中であぐらを組んで座る大男と目が合ってしまい、ギョッとさせられる。背中に龍の彫り物が入れられたこの人物像は、城戸自身を模りしたもので、実物よりも巨体に見えるのは、円筒形の水槽の表面が湾曲しているからだろう。水槽の背後には、天井付近から吊り下げられた厚いカンヴァスに、これまた城戸自身を写し取った「魚拓」ならぬ「人拓」。布地は深い青で塗り上げられているから、まるで深海のなかを漂う城戸の残像を見ているようだ。けれども、何より驚かされたのは、これまで水という非定型の素材からいかに彫刻的な形象を立ち上げるかという難問に取り組んできた城戸が、ここにきて人間の身体表現に大きく旋回し、なおかつ作家自身の「私性」を前面に押し出してきたことだった。身体を水に沈め、水の奥に送り出す光景から考えると、この展覧会は城戸自身がみずからのこれまでの「生」をあの世に葬り去る、象徴的な儀式だったのかもしれない。次はどのように展開するのか、注目したい。

2009/10/02(金)(福住廉)

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