2022年05月15日号
次回6月1日更新予定

artscapeレビュー

2011年11月15日号のレビュー/プレビュー

光と照明による能舞台の陰翳 WORK♯06 新作能「水の輪」

会期:2011/11/11~2011/12/12

山本能楽堂[大阪府]

大阪で一番古い能楽堂、山本能楽堂で昨年の10月から、LED照明デザイナーの藤本隆行氏とのコラボレーションで「光と照明による能舞台の陰翳」というシリーズの能公演が行なわれている。これは、能楽鑑賞の初心者向けに山本能楽堂で定期的に行なわれている夕方の公演のひとつで、はじめにシテをつとめる山本章弘氏による詳しい演目解説があり、終演後には客席の声に応える質疑応答の時間も設けられたユニークなプログラム。LED照明の演出で能を鑑賞するというこのシリーズでは、これまでに「葵上」「安達原」「葵上」「鉄輪」「鵜飼」「土蜘蛛」が上演されている。この日は「水都大阪2009」での初演以来、ときどき再演されている新作能「水の輪」が演目だったのだが、水鳥をかたどった井上信太の作品も舞台美術として使われていて、ことさら特殊な公演だった。環境問題をテーマにした物語の舞台は川。真っ暗ななかでLEDの光が舞台や舞台脇の水鳥に当たり、周囲をうっすらと青白く照らす様子が幻想的な雰囲気で、水辺の景色のイメージがすんなりと頭に浮かび、物語に入り込みやすい。特に感動したのは地謡、太鼓、笛などの演奏、音の迫力だ。暗闇から響く音や声の臨場感がすごい。客席と舞台との距離がとても近いというこの会場の特徴のせいもあるだろうが、LEDの演出の影響の大きさを感じた。変化に富んだドラマチックな能楽だった。また機会があれば行ってみたい。

2011/10/30(日)(酒井千穂)

国谷隆志 展「Mars」

会期:2011/10/18~2011/11/06

Gallery PARC(グランマーブル ギャラリー・パルク)[京都府]

国谷隆志はネオン管のインスタレーション作品をこれまでも度々発表してきた。色鮮やかな光彩や、光が安定した状態で維持されているそのインパクトはかなり強い。それだけにこのシリーズを展開し続けることはチャレンジングでもあると思うのだが、その都度、まるで各会場の特性に呼応するように印象が異なって見えるのが興味深い。今回の会場は商業施設が建ち並び、人通りも多い、三条通に面した建物の二階のギャラリー。約30本の赤い光のネオン管がランダムに配置された空間は、床にも、透明ガラスの壁面にもそれらの光が反射していた。訪れたのは昼間だったのだが、沢山の人が歩いている外の繁華街も見下ろせるなかで、まるで宙に浮いているような不思議な感覚も覚える。暗くなってからもう一度行く予定だったのだが叶わず残念。きっとガラスの壁面に写り込む光景も美しく、また昼間とは異なる魅力が味わえたに違いない。
写真キャプション:会場風景

2011/10/30(日)(酒井千穂)

神戸ビエンナーレ2011

会期:2011/10/01~2011/11/23

神戸ハーバーランド、ポーアイしおさい公園、[兵庫県]

第3回の神戸ビエンナーレをまわる。テーマは「きらkira」。まちなかの高架下や兵庫県立美術館のパートは楽しめたが、肝心のメイン会場である神戸ハーバーランドやポーアイしおさい公園は内容がちょっと混乱気味だった。いい作品があっても、これだと埋もれてしまうだろう。今回、東日本大震災の影響でコンテナそのものを使えなかったのも痛い。兵庫県美における渾身の「榎忠」展一発の方が神戸ビエンナーレ全体よりも心に残る。

2011/10/30(日)(五十嵐太郎)

第13回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展(2012)記者発表/新・港村 スーパースクール「伊東建築塾レクチャー」

会期:2011/10/31

国際交流基金/新・港村スクール校舎[東京都/神奈川県]

国際交流基金にて、ヴェネチア・ビエンナーレ建築展2012の日本館コミッショナーに伊東豊雄が選ばれたことについて記者会見が行なわれた。メインの展示は、子どもから寄せられたみんなの家のドローイングのほか、藤本壮介、平田晃久、乾久美子とともに共同設計を行なう、みんなの家である。畠山直哉が撮影した故郷の陸前高田の写真を導入部に使うが、それ以上にまだ喪の感情から抜けることができない彼が半ば地元民として、また棘としてプロジェクトに介入するというのが興味深い。同日の夜、新・港村にて、伊東塾の5カ月の活動を報告するイベントにも立ち会った。建築家養成講座もあるが、子どもを対象とした教育について、驚くほど結果が充実し、空間や場所の想像が豊かだったという。ビエンナーレの伊東の展示におけるみんなの家(建築家以外によるドローイング)への重視と確実にリンクしている。

2011/10/31(月)(五十嵐太郎)

カタログ&ブックス│2011年11月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

世界制作の方法 Ways of Worldmaking

編集:中井康之、池田良子、小野尚子、宮田有香
テキスト:八木雄二、牟田淳、中井康之
発行:国立国際美術館
サイズ:260×185mm 143頁

2011年10月4日〜12月11日まで国立国際美術館で行なわれている展覧会のカタログ。同展タイトルは、アメリカの哲学者ネルソン・グッドマンの著作『世界制作の方法』に由来し、彼の記号論的方法に通ずる先鋭的な作品が集められている。出展作家は、エキソニモ、パラモデル、クワクボリョウタ、木藤純子、金氏徹平、青木陵子+伊藤存、鬼頭健吾、大西康明、半田真規の9組。

展覧会ウェブサイト

日常/ワケあり

アートディレクション&デザイン:加藤賢策
発行日:2011年10月18日
発行:神奈川県民ホール
サイズ:B5判 192頁

2011年10月18日〜11月19日まで神奈川県民ホールギャラリーで行なわれている展覧会のカタログ。同展は、「日常/場違い」(2008年)の第2弾として開催されているもので、ニューヨークで活動する江口悟、田口一枝、播磨みどりの3名によって「ワケありな展示室に、ワケありの作家が制作するワケありの新作」が展示されている。

展覧会ウェブサイト

都市の解剖学──建築/身体の剥離・斬首・腐爛

著者:小澤京子
解題:田中純
発行日:2011年10月20日
発行:ありな書房
価格:5,040円(税込)
サイズ:215x152mm 262頁

カナレットの剥離/移植のヴェネツィア都市表象、ピラネージの蝟集/重層/撹乱する古代ローマの復元、ルドゥー/サドの性愛建築における対立物の一致、ユベール・ロベールのフランス革命期の廃墟表象、ゴーティエ/ユイスマンスの文学的病理学者の眼差し、これら対象の表皮を切り開き、剥がし、あるいは切断する、眼の指で撫でるような欲望を内に秘めた、都市へと向けられた解剖学的な眼差しの諸相を呈示する![本書帯より]

文化のための追及権──日本人の知らない著作権

著者:小川明子
発行日:2011年10月19日
発行:集英社
価格:756円(税込)
サイズ:174×110mm 192頁

絵画や彫刻を作る芸術家は、日本では一度作品を売却した後は、オークションなどによっていくら作品の価格が上昇しても、一切収入を得ることが出来ない。これではアーティストはなかなか育たないだろう。実はこれは日本の文化的貧困につながる大問題である。ヨーロッパやアメリカの一部では「追及(利益配当)権」という著作権の保護システムによって、作者の利益がそうした場合においても保証されるシステムが作られている。本作では、著作権についてわかりやすく解説しつつ、その一部としての追及権について日本で初めてくわしく紹介する。[集英社新書サイトより]

浅草のうち(くうねるところにすむところ:家を伝える本シリーズ 27)

著者:乾久美子
発行日:2011年10月12日
発行:平凡社
価格:1,890円(税込)
サイズ:A4変型判 40頁

浅草文化観光センター設計競技での応募案をベースに、浅草の持つ場所性、空間性の魅力を引き出し、浅草のまちに、「うち」のような居心地の良さを見出す。家を伝える本シリーズ復刊2冊目。[平凡社サイトより]

2011/11/15(火)(artscape編集部)

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