artscapeレビュー
2012年07月15日号のレビュー/プレビュー
岡本里栄 個展「目を凝らす:よく見えない」
会期:2012/06/19~2012/07/01
Gallery PARC[京都府]
2012年に成安造形大学洋画コース研究生を修了後、現在、京都精華大学大学院に在籍しているという岡本里栄の個展。今展で初めて知った作家だ。会場には10点の油画が展示されていたのだが、全体的にどれもおぼろげな光景を思わせる作品で、画面になにが描かれているのかはじめは判然としない作品がいくつかあった。しかし不思議なことに、位置や距離をかえてじっと画面を見ていると描かれた対象が「見えてくる」という感覚を覚えるから感動。そのなかには本人の自画像も含まれていたかもしれないが、すべての作品に女性(の仕草や表情)が描かれていた。ステイトメントによると、その手法には独自のルールがあるようなのだが、その色彩感覚にも感心する。映像のピントが一気にあって存在がくっきりと確認できる瞬間のような感覚と驚きが忘れられない。また次回の発表も楽しみだ。
2012/07/01(日)(酒井千穂)
淀川テクニック個展「はやくゴミになりたい」
会期:2012/06/16~2012/07/08
ARTZONE[京都府]
淀川テクニックの個展。鴨川へ“ゴミ狩り”に行き、拾ってきたゴミを観察し、その“ゴミの生涯”を妄想して“ゴミ履歴書”を制作するという、この日予定されていたワークショップは雨のため一部変更となったそうで、会場では、スタッフや淀川テクニックによって事前に拾い集められていた“ゴミ”をTシャツに飾り付けて着る、というプログラムが行なわれていた。その後、参加者は自作のTシャツを着てやはり“ゴミ履歴書”を制作。各々がどんなことを想像してどんな履歴書をつくったのかも気になるのだが、「最初からゴミのものなんてない」をプロローグに行なわれていた淀川テクニックによるレクチャーが面白そうだった。参加者は若い人たちが多かった印象だが、きっと“ゴミ”というよりも“モノ”への意識が変わる気がした。二階の壁面に展示されていた《有漏路無漏路(うろじむろじ)》という本展のための新作インスタレーションは、拾ってきた“ゴミ”を素材にしているのだが、“ゴミ”がゴミでなくなるときをみごとに示す迫力と説得力。
2012/07/01(日)(酒井千穂)
カタログ&ブックス│2012年7月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
サーキュレーション──日付、場所、行為
1971年、パリ。世界各国から若い芸術家たちが参加したビエンナーレを舞台に、中平卓馬は「表現とは何か」を問う実験的なプロジェクトを敢行する。「日付」と「場所」に限定された現実を無差別に記録し、ただちに再びそれを現実へと「循環」させるその試みは、自身の写真の方法論を初めて具現化するものだった。[オシリスサイトより]
沖縄写真家シリーズ 琉球烈像 第8巻 中平卓馬写真集 沖縄・奄美・吐力喇1974-1978
沖縄とヤマトが出会い重なりあう不可視の境界を求めて南を目指した写真家が見たものは、無際限にやさしく、しかしその静けさをもって彼を突き放す孤立した島々だった。1977年の記憶喪失に至る病をはさみ、涯てなき地平・暗闇への志向が陽光をあびる表層への眼差しに変化してゆく作品群を収録。未発表作多数含む104点(カラー74点)。[未來社サイトより]
石巻 VOICE vol.2 CULTURE
石巻には素晴らしい文化とそれに携わる魅力的な人達がいます。そんな石巻文化に関わる人たちが本誌にはたくさん登場します。表紙は「軍鶏」などを代表作にもつ石巻出身の漫画家・たなか亜希夫氏の生原稿の写真。氏の実家において津波により水をかぶってしまった時の写真です。[ISHINOMAKI 2.0サイトより]
写真集狂アラーキー
IZU PHOTO MUSEUMで2012年春に開催された「荒木経惟写真集展 アラーキー」の展覧会カタログ。本書では1970年に制作された幻の写真集「ゼロックス写真帖」から2012年5月までに出版された全書籍情報(「荒木経惟全著作1970─2012」、カラー表紙画像付き)を収録し、デビュー以前の電通勤務時代に制作された写真集の原型ともいえるスクラップブック(4冊)を紹介しています。さらに、東日本大震災への応答である渾身の新作《’11 3・11》(63点)に加え、24名の寄稿者によるエッセイ、論考を収録。[NOHARAサイトより]
文藝別冊 [総特集]いしいひさいち 仁義なきお笑い
デビュー40周年記念いしいひさいち大特集。本人書き下ろし「でっちあげインタビュー」、しりあがり寿、吉田戦車、宮部みゆきらの寄稿、大友克洋インタビューのほか、貴重な資料満載。[河出書房新社サイトより]
アートプロジェクト運営ガイドライン
帆足亜紀がコーディネーターとなった連続ゼミ「プロジェクト運営 ぐるっと360度」で、ゲストに招いた関係者の意見を取り入れながら作成したアートプロジェクトの運営ガイドライン。アートプロジェクトを「実施する」一連のプロセスのポイントをチェックできる。コーディネーター、ゲストによるその活用に関する考え方を示したエッセイも収録。東京文化発信プロジェクトのサイトからダウンロード可能。
http://www.tarl.jp/cat_output/cat_output_plan/1301.html
2012/07/17(火)(artscape編集部)