artscapeレビュー
2017年02月15日号のレビュー/プレビュー
921地震教育園区
[台湾、台中市]
台中へ。921地震教育園区を初めて訪問する。1999年に2,500人近い死者を出した巨大地震のメモリアルであり、防災教育を啓蒙する施設だ。ちょうど断層の上だったために破壊された中学校を活用する。驚かされるのは、上下左右に激しくズレた運動場。さすがに、どんな屈強な構造、耐震や免震だろうと、地面が割れて、こんなに動いたら建築は絶対に壊れる。この裂け目を縫うように膜の屋根をかぶせる。設計はJAY W.CHIUほか。さらに進むと、アクリルの柱で補強した壊れた教室群が視界に入る。映像体験の展示を抜けると、ぺしゃんことしか言いようがない無惨な校舎があり、ブリッジを渡ると、上から見学できる。百聞は一見に如かず。が、日本だと、残念ながら、こういう震災遺構は残らない。
2016/12/29(木)(五十嵐太郎)
安藤忠雄《亜州大学現代美術館》
[台湾、台中市]
亜州大学の現代美術館へ。安藤忠雄の設計だが、現地に行くと彼の名前をとって「安藤美術館」の表示がある。三角形のモチーフを使い、全体から細部まで統一してデザインされている。3階に上がると、三角形の展示室から外に視界が開け、外周でサン・ピエトロ大聖堂風の図書館を含むキャンパス全体を見渡す。幾何学のルールによって生じる三角形や平行四辺形の部屋は、うまく展示に使われていたこともあり、意外と気にならなかった。
2016/12/29(木)(五十嵐太郎)
《伊東豊雄的劇場夢》觀念建築展─探索建築大師的哲學思維
会期:2016/08/26~2017/01/31
台中国家歌劇院[台湾、台中市]
1年9カ月ぶりの台中国家歌劇院へ。内装がないときは、ひょうたんの空間形式がわかりにくいのが気になったが、完成したインテリアを体験すると、それとは別の明るい洞窟の楽しさがあることに納得した。運営も開放的で大勢の来客でにぎわう。ホールのホワイエも自由に見学でき、格式のあるヨーロッパの劇場だと逆に難しいかもしれない。1階、5階、屋上にVVG系列の店舗が入り、低密度の商業スペースとしても豊かである。オープンを記念して、伊東豊雄の観念建築展が開催中だった。人気のコンテンツで、約1時間待って入場した。いくつかの模型が吊るされるなか、彼のエマージング・グリッドの幾何学的な思想を表現する映像が、うねうねした壁や床に投影される。これを観客はでかいクッションに寝転びながら、リラックスして鑑賞するのだが、なかなかよい。ところで、今回いくつか台湾ガイドを見たら、台中自体が掲載されていない、もしくはあっても、国立美術館もオペラハウスも紹介していない。日本人は美術館も建築体験も興味がないということか。
写真:左上3枚=《台中国家歌劇院》 左下=VVG系列店 右上2枚=伊藤豊雄展、右下=《台中国家歌劇院》庭
2016/12/29(木)(五十嵐太郎)
郵政博物館、台北二二八国家紀念館
[台湾、台北市]
未踏だったミュージアムのエリアを散策する。郵政博物館へ。新年を意識した干支の切手特集もよかったが、各国のアーカイブが充実し、日本セクションではまる。個人的にも昔収集していたが、最も絵を覚えていたのが、1976-77年発行の切手だったから、その頃に熱中していたことがわかる。それにしても昭和時代は、国立の建築がオープンするたび、記念切手が出ており、祝福されたことがわかる。無駄使いとバッシングされるいまとはまるで違う。
隣の二二八国家記念館は、かつて絵も展示した1930年代の教育館を保存し、事件の記憶を伝える施設にリニューアルする。台湾は近代建築を本当によく残しており、感心させられる。悲劇を伝える常設エリアは、リベスキンドの《ユダヤ博物館》の影響を受けたものと思われる、斜めや裂け目の展示デザインだった。企画は戦争博物館などを紹介する。
写真:左列=《郵政博物館》 右列=《台北二二八国家紀念館》
2016/12/30(金)(五十嵐太郎)
花博公園、台北ビエンナーレ2016ほか
会期:2016/09/10~2017/02/05
花博公園、台北市立美術館[台湾、台北市]
圓山駅から花博公園を歩く。ペットボトルをリサイクルし、夜はLEDで内部から光る壁をもつARTHUR HUANGのエコ・アークなど、2010年の博覧会開催時に訪れたパヴィリオンがいくつか残る。台北市立美術館の南側エントランスに接続された新しいガラスのチューブから入る。台北ビエンナーレ2016はレベルが高く、本格的な内容だった。陳界仁によるハンセン病施設の映像がやはり強烈である。シバウラハウスでのパフォーマンスも紹介され、写真に僕の背中が映っていた。ほかにXavier LE ROYによるコレオグラフィーの実演、建築ではカンボジアのPEN Sereypagnaなど。2階では、フランシス・アリスの小を散りばめる。また、ビエンナーレがスタートして10周年ということもあり、1996年から2014年の歴史を振り返るメタ展示も開催していた。継続によって確かな蓄積になっている。地下では、台北アートアワード2016展を開催し、1980年代生まれのさまざまなタイプの若手作家を紹介していた。3階では、1941年生まれの女性写真家、王信の大規模回顧展が開催されていた。
写真:左=上から、《エコ・アーク》、《台北市立美術館》の南側エントランス、Xavier LE ROY、PEN Sereypagna 右=上から、フランシス・アリス、10周年展示、台北アートアワード2016展、王信回顧展
2016/12/30(金)(五十嵐太郎)