2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2009年02月01日号のレビュー/プレビュー

新人画会展 戦時下の画家たち

会期:11/22~1/12

板橋区立美術館[東京都]

戦中の1943年、靉光、麻生三郎、糸園和三郎、井上長三郎、大野五郎、鶴岡政男、寺田政明、松本竣介の8人の画家によって結成された新人画会。本展はその全貌に迫る好企画。現存する資料が少ないなか、当時の展覧会を見た者の証言を聞き取り、出品作品を特定ないしは推測するなど、学芸員の堅実な調査研究の成果が現われている。しかも、かつての展覧会の会場だった資生堂画廊の一部を美術館の中に再現してそこで当時のまま絵を見せたり、「画布購入票」や「絵画慰問行動計画」を展示することで戦時下の絵描きの暮らしを浮き彫りにするなど、展示の仕方にも工夫が凝らされている。麻生三郎夫人へのインタビューをまとめた記事やメンバーの動向と当時の美術界、政治社会の動きをまとめた年表を収めた図録も、充実した内容。こうした地道な研究の成果が存分に現われた展覧会は、もっと評価されるべきだし、もっと見てみたい。

2009/01/09(金)(福住廉)

ベ・サンスン展 関係の形 ‘結び目’

会期:1/10~31

イムラアートギャラリー[京都府]

新作と、ここ1、2年の近作9点を出品。彼女の作品は、白いキャンバスに木炭をすり込むようにして描いたものと、黒いベルベットに細筆で白い線を無数に描いたものが対をなしている。前者は確信に満ちた強い存在感を放ち、後者は深遠な中にも柔らかな気配を感じさせるのが特徴だ。白地に黒線の作品では「結び目」がモチーフになっている。これは人間同士の関係性を示しているのだが、彼女が一児の母になったことで、より説得力が増したように感じられた。

2009/01/10(土)(小吹隆文)

The Den-en Dream MOTOKO+井上英樹

会期:1/9~2/1

shin-bi[京都府]

写真家のMOTOKOと編集者の井上英樹が滋賀の農村を取材して、写真とテキストによる展覧会を開催。どちらの仕事も丁寧で、土地に根差して生きる人々への共感が滲み出ていた。長文を読みつつ写真も見るのは少々骨が折れたが、やはり両方に目を通した方が圧倒的に説得力がある。展示室ではPCのスライドショーでも写真が展示されていたが、ここにテキストを組み込む手もあったんじゃないかな、とも思った。

2009/01/10(土)(小吹隆文)

山下清 展 放浪の軌跡

会期:1/10~2/22

伊丹市立美術館・伊丹市立工芸センター[兵庫県]

山下清の展覧会は珍しいが、大混雑している伊丹市立美術館もまた珍しい。テレビ番組の影響力に改めて感心する。私自身、彼の作品を見るのは初めてだが、貼り絵の中でも戦後の作品は確かに質が高い。また、鉛筆画とペン画もたいへん魅力的だ。昭和12、13年頃の作品に戦場や軍隊を描いたものがあることにも驚かされた。出品数が多く、愛用品や衣服、リュックサックなど資料類も充実しておりサービス満点。普段は美術館に来ない「裸の大将」ファンも十分満足したのでは。

2009/01/11(日)(小吹隆文)

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未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2008

会期:12/13~1/26

国立新美術館[東京都]

文化庁の芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)の成果発表展。田中信太郎や舟越桂、開発好明など15名の作家による作品が発表された。絵画から彫刻、染織、写真など異なるジャンルが集結しているとはいえ、群を抜いていたのは開発好明。365日、毎朝自分の顔を撮影した写真を一挙に発表し、そのうちのいくつかを編集して映像化することで、時間の経過とともに老いていく肉体の変遷を要約して見せた。世界のどこで朝を迎えようとも、つねに同じ作業を自分に課すという規則性に、生活とアートを決して分けない、アーティストとしての矜持を見た。

2009/01/11(日)(福住廉)

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2009年02月01日号の
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