artscapeレビュー

2010年09月01日号のレビュー/プレビュー

三宅砂織 展

会期:2010/07/09~2010/08/06

FUKUGAN GALLERY[大阪府]

フォトグラム技法で浮遊感漂う世界を描き出す三宅砂織。今年はVOCA賞を受賞し、その注目度は今や全国区だ。絵画とも写真ともつかない独特の画面は何度見ても不思議。少女たちが戯れる絵柄も手伝って、甘美な夢想空間へとわれわれを誘ってくれる。本展ではそれら作品だけでなく、制作に使用したフィルムなどのパーツを一部展示していたので驚いた。彼女の個展を何度か見たが、このような展示は初めて。次なる展開の兆しと言ったら大げさかもしれないが、三宅は何か新しいことを考えているのかもしれない。

2010/07/23(金)(小吹隆文)

トロマラマ

会期:2010/07/24~2010/11/07

森美術館 ギャラリー1[東京都]

トロマラマはインドネシア在住の3人組で、大量のボタンやビーズなどでコマ撮りアニメーションを制作するユニット。とりわけ抜群だったのが、木版画の版木をもとにミュージック・ビデオに仕立て上げたアニメーション作品。(音楽も含めて)その映像が「クール」だとは到底言えないが、しかしローテクならではの奇妙な映像体験をもたらしているのはまちがいない。アップテンポのロックに合わせて次々と変化していく画面は、たしかに高速の時間を体感させるが、それらが版画とコマ撮りというそれぞれ長大な時間を費やして制作されたという背景を知ると、圧縮された時間のなかから部分的に解凍された時間が果てしなく漏れ出てくるかのように錯覚して、時間を二重に経験することができる。デヴィッド・ハーヴェイはポストモダン社会の条件として「時間と空間の圧縮」を挙げていたが、トロマラマはこうした時間の多重性こそポストモダン社会の同時代的なリアリティーであることを端的に示している。これは、同時期に隣接する会場で催されている「ネイチャー・センス」という恐ろしく大味で、無常というより、ただ空疎な展覧会などよりも、よっぽど時間と空間に根ざした現在の自然観を的確にとらえていた。

2010/07/23(金)(福住廉)

八木敬太郎 展

会期:2010/07/26~2010/07/31

番画廊[大阪府]

自作のフレームの上に薄い麻布を被せた半立体的な平面作品を展示していた。これまでの八木の作品は既成のフレームの骨組みを一部改造して上から絹布を張ったものだった。それゆえ作品の主眼は絵画の平面性や虚構性に対する批評にあるとばかり思っていたが、どうやらそれは間違いだったらしい。彼はフレーム自体も絵画の構成要素とすることで、より自由な空間表現を目指しているのであろう。フレームを自作することにより、制作意図が伝わりやすくなった。

2010/07/26(月)(小吹隆文)

宮永亮「メイキング」

会期:2010/07/10~2010/08/14

児玉画廊[京都府]

自動車の屋根にカメラを設置し、夜の京都をクルージングしながら撮影した映像を、7つのスクリーンに投影。別の大画面ではすべての映像を重ねて上映していた。大画面の作品では夜景が徐々に変化し、遂には光の乱舞へと至るのが見事。本作は既に京都の京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAと東京の児玉画廊で発表済みだが、本展では吹き抜けの2フロアを生かした立体的展示と、撮影に用いた愛車ミニを映像とともに展示するインスタレーションで、作品のポテンシャルの更なる引き上げに成功した。

2010/07/27(火)(小吹隆文)

有毒女子

会期:2010/07/17~2010/08/08

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

岡山愛美、小谷真輔、後藤真依、坂本優子、唐仁原希、羽根田愛生、福永晶子、藤場美穂によるグループ展。いずれも刺激的な展覧会タイトルに負けない個性豊かな作品だったが、唯一の男性作家である小谷真輔の作品に目を奪われたのは、やはり私が男だからか? また本展では、崔正成監督の映画『スタンドアップ! シスターズ』の上映も行なわれた。画廊で映画上映と美術展示を同時に行なうとは、なんて素敵なアイデア。オルタナティブスペースとしての画廊の可能性が感じられる良い試みだった。

2010/07/27(火)(小吹隆文)

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