artscapeレビュー
2010年10月01日号のレビュー/プレビュー
プレビュー:FLAT LAND 絵画の力
会期:2010/10/05~2010/11/07
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA[京都府]
現在活躍中の10名の若手画家を紹介する。いずれもメディア環境が劇的に変化した1990年代後半を経験したゼロ年代世代なのが本展のキモ。3つの観点──モダンアートの現在を絵画についてどう考えているか、ゼロ年代絵画と80年代絵画の関連あるいは違い、インターネットで簡単に画像や動画が入手できる状況下で「絵画の力」はどのような点にあるのか──を軸に、彼らの表現と現在の絵画の状況を明らかにしていく。出品作家は、大竹竜太、川口奈々子、小柳裕、高木紗恵子、中岡真珠美、ロバート・プラット、北城貴子、前田朋子、増田佳江、横内賢太郎だ。
2010/09/20(月)(小吹隆文)
小林耕平《2-9-1》(里山の古い建物にて)
会期:2010/09/25~2010/09/28
小川町小学校下里分校[東京都]
最近の小林耕平は、カメラマンを置くことで、出演する小林とカメラマンとのスリリングなセッションが作品の見所となっていた。今作では、こうしたやり方を一旦脇に置き、カメラは被写体(小林)の前で固定された。17分ほどの作品。小さな作業場らしき空間に、紙コップやティッシュ箱、水槽に入った石など日常的なオブジェが散乱。小林は、それらを持ち上げたり、テーブルの上で押したりする。ちょっとした動作の集積が見る側に突然興味深いものになったのは「水槽の石に注目して下さい」と小林が発してからだった。石は画面の右下にある。いくら注目しても石になにが起こるわけでもなく、小林が石になにかをするわけでもない。「命令」が放置されることで、観客はその状況に対して宙吊り状態にさせられる。今作の特徴は、カメラの固定のみならず、この言葉の使用だった。しかも、言葉は字幕として画面に現われもした。パフォーマーが観客に向けた約束や命令、この言葉の機能が映像に緊張感を与える。たんに身体所作ではなくこうした緊張状態のために、本作はきわめてダンス的な作品だと思った。神村恵らダンス作家との活動が近年活発だった小林の新機軸が示された作品だった。
2010/09/26(日)(木村覚)
プレビュー:イヴォンヌ・レイナー『グランド・ユニオン・ドリームズ』ほか
[東京都]
10月20日に四谷アート・ステュディウムで行なわれる『グランド・ユニオン・ドリームズ』再演は、ダンスのみならず現代美術に興味のある方もきっと楽しめる企画です。1971年に「ジャドソン・ダンス・シアター」の主要メンバーだったイヴォンヌ・レイナーによって上演された本作は、いわゆるポスト・モダンダンスが実態としてどういうものであったのかを確認するよき手がかりを与えてくれることでしょう。暗黒舞踏とほぼ同時代に登場したポスト・モダンダンスは、今日の神村恵や手塚夏子らの活動と直接的にあるいは間接的に接点が指摘できる、そういう意味できわめて今日的な意義を有するダンスです。あとは、ロロ(三浦直之)の公演『いつだっておかしいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校』(再演、2010年10月17日~24日@新宿眼科画廊)にも注目したい。8月の『ボーイ・ミーツ・ガール』は新しい作家の登場を感じさせ、ともかくドキドキさせられた(役者たちも魅力的だった)。こちらも再演だけれど快快『アントン・猫・クリ』(2010年10月27日~31日@横浜STスポット)もお見逃しなく。一年半前に「キレなかった14才りたーんず」というシリーズで上演された本作は、作・演出の篠田千明の作家としての力量を知ることができる。
2010/09/30(木)(木村覚)