2018年12月01日号
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artscapeレビュー

須田一政「筋膜」

2015年06月15日号

会期:2015/05/01~2015/05/31

Gallery Photo/synthesis[東京都]

「筋膜」というタイトルは、東京・四谷のGallery Photo/synthesisのメンバーの後藤元洋によるもののようだ。「頭から指先まで全身を包み込んでいる膜」に託して「須田一政の内部」を見てみたいという願望を込めた企画であり、展示は「須田一政氏がその自宅と家族のみを撮った写真で構成」されていた。
たしかに並んでいるのは、カメラを構える鏡に映ったセルフポートレートをはじめとして、雑然としたモノがあふれる自宅の内部、どこか曖昧な姿で写り込んでいる奥さんや娘さんなどのスナップ写真群だ。にもかかわらず、それらに「私写真」的な閉塞感がまったく感じられず、どこか醒めた距離感を感じさせる写真が多いのが面白い。後藤が指摘するように、これらの写真群はむしろ「須田の外部、『他者』『街』の写真」とストレートに結びついているように思えた。要するに、須田にとっては「内部」も「外部」もコインの裏表であり、「内部」は素っ気なく突き放して、「外部」は逆に生々しく身体化して撮影しているのではないだろうか。両者を自在に行き来する通路が、写真にはっきりとあらわれてきているようにも思える。
展示の仕方にも工夫が凝らされていた。いつもはフレームに入れられた写真が、淡々と壁に並んでいることが多いのだが、今回は印画紙を直接ピン留めしたり、大伸ばしにしたり、額に入れたりして、むしろノイズを積極的に活かそうとしている。このところ、須田の写真家としての活動には弾みがついてきているように感じる。新作をどんどん発表してほしいものだ。

2015/05/09(土)(飯沢耕太郎)

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