2017年07月15日号
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artscapeレビュー

ディズニー美術

2015年06月15日号

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会期:2015/04/28~2015/05/10

クンストアルツト[京都府]

著作権にうるさいディズニー社に挑戦するかのような、ミッキーや白雪姫などのディズニーキャラクターをモチーフにした作品を紹介する意欲的な企画展。出品は入江早耶、岡本光博、ピルビ・タカラ、高須健市、福田美蘭の5人で、作田知樹も文章で参加。圧巻は福田の《誰が袖図》。着物を掛けた衣桁を描く近世の「誰が袖図屏風」の形式を借りて、見覚えのある色とりどりのドレスや帽子や靴を描いたもので、キャラクターを登場させずに小道具だけで示唆するという高度なテクニック。のみならず、画面左下には殺伐たる砂漠の風景をあしらった屏風が描かれているが、これはふたりの日本人が殺害されたというシリア砂漠というから、およそディズニーワールドとは対極の世界観をぶつけているわけだ。これは力作。入江は『白雪姫』『眠れる森の美女』『ピーターパン』の3冊の絵本を消しゴムでこすり、出たカスを色分けしてそれぞれ白雪姫と意地悪な女王、王子さまとドラゴンに姿を変えたマレフィセント、ピーターとフック船長を合体させた3体の小さなフィギュアをつくり、こすりとられた絵本の前に置いた。その超絶技巧もさることながら、ディズニー特有の善悪二元論を茶化すような批評精神が秀逸だ。一方、みずから体を張ってディズニー社に挑んだのはピルビ・タカラ。彼女自身が白雪姫に扮してパリのディズニーランドに入ろうとしたら止められ、着替えるように指図されたというビデオを公開している。しかもまだ会場の外なのに。これは人権侵害ともいえ、明らかにディズニー社にとってマイナスイメージだ。そのほか、ネズミのシルエットを天地逆にしたようなマークを商標登録した高須、バッタもんのネズミ人形を集めてガマグチをつくった岡本など、きわめて真摯で充実した展示になっている。しかしじつのところこの展覧会、ディズニー社への挑戦というより、著作権に萎縮したり自主規制に走りがちなアーティストやメディアの姿勢を問うのが目的といえるだろう。

2015/05/08(金)(村田真)

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