2018年09月15日号
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artscapeレビュー

2015年06月15日号のレビュー/プレビュー

西村多美子「猫が...」

会期:2015/04/24~2015/05/16

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

1969年に東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)を卒業した西村多美子の雑誌デビューは『カメラ毎日』(1970年8月号)の「4 GIRL PHOTOGRAPHERS」という特集だった。渡辺眸、鹿間英子、中西喜久枝とともに、写真学校を卒業したばかりの女性写真家たちの作品が、それぞれ2~3ページずつ特集されたのだ。
たまたま家に泊まりがけで遊びにきた女友だちをスナップしたこのシリーズは、東京写真専門学校在学中の「状況劇場」の役者たちの写真とも、70年代以降に日本各地への旅を重ねて撮影された「しきしま」のシリーズとも違って、まさに偶然の産物というべきだろう。至近距離から、寝転がっているモデルの姿を撮影し続けた一連のショットには、のびやかな開放感とともに濃密なエロティシズムを感じる。『カメラ毎日』の編集部で、作品ページの構成を担当していた山岸章二に写真を見せたところ、「多美子がお行儀の悪い写真を撮ってきた。でもおもしろい」と評されたのだという。たしかに「女の部屋に飼われた猫」のようなモデルを、あくまでも「女」の目でとらえようとしていることが、その「お行儀の悪い」、ふわふわと宙を舞うようなカメラワークからしっかりと伝わってくる。
今回展示された18点は、しまい込んでいて、たまたま見つけ出したネガから再プリントしたのだという。西村自身は、このような仕事をさらに展開していくことはなかったのだが、四半世紀後の90年代半ばに登場してきた女性写真家たちの、「女」の視点を強力に打ち出した写真の先駆けとなる作品といえそうだ。展示を見て、2つの世代のつながりと断絶を、もう一度考え直したいと思った。なお、展覧会にあわせて、ZEN FOTO GALLERYから同名の写真集が刊行されている。

2015/05/01(金)(飯沢耕太郎)

鎌倉からはじまった。1951-2016「PART1: 1985-2016 近代美術館のこれから」

会期:2015/04/11~2015/06/21

神奈川県立近代美術館 鎌倉[神奈川県]

今年度いっぱいで閉館する「鎌近」最後の企画展。1951年の開館以来60年を超す展覧会活動を、現在から過去に向かって3回に分けて振り返っている。パート1では、85年から現在まで30年間に開かれた展覧会のなかから、斎藤義重、井上長三郎、山下菊二、田淵安一、山口勝弘、宮脇愛子、李禹煥、河口龍夫、畠山直哉、内藤礼ら約70作家の作品を展示。あれ? 85年以降といいながら、最後の3、4人を除けばそれ以前の古い作家ばかりじゃないかと思うのだが、あくまでこの30年間に展示された作品というだけで、制作年も作家の活躍した時代も大半はそれ以前のもの。だから必ずしも時代を反映した展示になってるわけではないのだ。展示全体を通して感じたのは、どこかしら文学性(文学臭も含めて)を漂わせる作品が多いこと。基本的にひとり1点の出品なのに、なぜか詩人の西脇順三郎だけが3点(飯田善國との詩画集を合わせれば4点)も出品しているせいもあるかもしれないが、そうじゃなくても、例えば田淵安一はあるけど桑山忠明はないとか、李禹煥はあるけど高松次郎はないとか、河口龍夫はあるけど菅木志雄はないとか、また関西の作家がごっそり抜けてるとか、なんとなく趣味の偏りがうかがえる。つまり鎌近は文学好きというか、文学好きな美術が好きなのだ。ところで坂倉準三設計の美術館は、近代建築の記録と保存を目的とする国際組織DOCOMOMO(最初NTTドコモが出資してるのかと思ってた)の「日本近代建築20選」に選ばれたこともあるモダニズムの名建築。それだけに来年、敷地を所有する鶴岡八幡宮に返還される前に取り壊されるんじゃないかと心配していたが、現在は県と八幡宮のあいだで保存を前提に調整が進んでるらしい。でもどうせ残すならただ保存するだけでなく、文化的に活用してほしいものだ(八幡宮の宝物殿は似合わないけどね)。

2015/05/01(金)(村田真)

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近代日本の社会と絵画──戦争の表象

会期:2015/04/11~2015/06/07

板橋区立美術館[東京都]

鎌倉から乗り継いで成増で「戦争画」仲間と合流し、板橋と練馬をハシゴ。板橋区美は駅から遠いけど、コレクション展なので入場無料なのがうれしい。ほんとは公立美術館はすべて入場無料が原則のはずなんだけど。さて、タイトルは「戦争の表象」だが、第2次大戦前後(おもに30-60年代)に描かれた絵画を集めたもので、必ずしも戦争がモチーフになっているわけじゃなく、いわゆる戦争記録画は皆無。でも新海覚雄の《貯蓄報国》のような銃後の風景や、山本日子士良や古沢岩美のように従軍中に戦地で描いたスケッチもある。おそらく美術館としては、戦時中にもかかわらず戦争とは関係ない主題に取り組んだ松本竣介や麻生三郎、寺田政明ら新人画会をメインにしたかったんじゃないかと思うけど、それ以上に目立ったのが古沢岩美、福沢一郎、小川原脩、高山良策、山下菊二らシュルレアリスム系で、ざっと半数を占めている。板橋はとくに多く集めたのかもしれないが、30年代に一部でシュルレアリスムが猛威を振るったのも事実だろう。それにしてもシュルレアリスムと戦争とは近そうで遠い、およそ思想的にも表現的にも水と油のような関係のはず。だとすれば、シュルレアリスムから戦争画に流れた画家たち(同展には出品されていないが福沢も小川原も山下も戦争画を描いた)は、両者をどのように融合させたのか、あるいは融合させなかったのか、興味深いところではある。

2015/05/01(金)(村田真)

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没後100年 小林清親展

会期:2015/04/05~2015/05/17

練馬区立美術館[東京都]

これも日清戦争を描いた戦争画が出ているので見に行く。お目当ては、2月に静岡市美に行ったとき見られなかった《我艦隊黄海ニ於清艦ヲ撃チ沈ル之図》。清の戦艦が沈んでいく様子をまるで水族館のように水中から見た想像図なのだが、カタログでは気づかなかったけど実物を見て驚いたのは、沈没する船体に巻き込まれて沈んでいく無数の人間が細かく描かれていること。これは流体力学的にいえば理にかなった描写だと思うけど、なんでこんな不可視の情景を想像することができたんだろう。清親は最後の浮世絵師であると同時に、五姓田義松や高橋由一とともにワーグマンに習った最初の洋画家でもあり、かなり合理的な思考の持ち主だったのかもしれない。

2015/05/01(金)(村田真)

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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を見る。最初から最後まで、ワンカットのように延々と続くカメラワークは、初日を控えた閉鎖的な舞台の空気感をかもし出す。一方、まさかの超現実的なSF風の描写は、マイケル・キートンの内面世界を表現し、ドラムのみの演奏によるバックグラウンド・ミュージックは緊張感を高める。それにしても、娘役エマ・ストーンの目力がすごい作品だ。

2015/05/01(金)(五十嵐太郎)

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