2018年06月15日号
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artscapeレビュー

林明輝『空飛ぶ写真機』

2015年06月15日号

発行所:平凡社

発行日:2015年5月12日

『水のほとり』(愛育社、2001年)、『森の瞬間』(小学館、2004年)など、クオリティの高い風景写真集を刊行してきた林明輝は、近頃何かと話題になっているドローン(マルチコプター)にカメラを搭載して、2013年から全国各地を撮影しはじめた。ヘリコプターやセスナからの航空写真では、150メートル以下の高度での撮影はできない。だが、ドローンならかなり低い高度からでも撮影可能なので、カメラアングルや構図を自由に選択できる。まさに「鳥の目線だけでなく、時には昆虫の目線で」見た眺めを定着できるということだ。撮影機材が軽量化したことも大きかった、2400万~3600万画素という高画質であるにもかかわらず、重さは1キログラム程度のミラーレス一眼レフカメラの出現で、飛行時間が数分から20分に伸びたという。
結果として、「撮り尽くされたと思われる有名な景勝地であっても、新鮮な風景」が見えてくることになった。たしかに北海道から沖縄まで、四季とりどりの風景写真をおさめた写真集のページを繰ると、地上からの眺めとしては見慣れたものであっても、上方から思いがけない角度で見下ろした風景は、浮遊感を生み出す思いがけないものになっている。ただ、今のところはまだ「有名な景勝地」のネームバリューに頼っている写真も目につく。氷の穴の中に水が落ち込む「石川県/百四丈滝」の滝壺の写真のように、無名の景観に新たなピクチャレスクを再発見していくことが、さらに求められていくのではないだろうか。
なお、写真集の刊行にあわせてソニーイメージングギャラリー銀座で同名の写真展が開催された(前期5月1日~14日、後期5月15日~28日)。同展は来年4月まで山形、横浜、大田(島根県)、広島、東川(北海道)、富山などに巡回する予定である。

2015/05/13(水)(飯沢耕太郎)

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