artscapeレビュー

アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館

2017年11月01日号

[ポーランド、オシフィエンチム]

今回の重要な目的地であるアウシュヴィッツ博物館へ。クラクフからのバスががらがらで油断したら、すでに現地に大量の観光バスが並んでいた。また予約をちゃんとしていなかったのだが(時間ごとに人数制限がある)、英語ツアーの空きになんとか入れてもらい、無事に見ることができた。実際、アウシュヴィッツのエリアは小さいにもかかわらず、世界中から膨大な数の観光客が押し寄せるため、なるほど混み合う10時から16時はガイド形式でのみ見学可能にしないと、確実に現場はカオス状態になるだろう。ゆえに、途切れなく各国語のガイドツアーが数珠つなぎになって、各棟の部屋をまわり、狭い中廊下を団体がすれ違う。有名な頭髪のほか、靴、めがね、かばんなど、ユダヤ人が使っていた日用品をジャンル別に大量に並べて展示する形式は、いつ始まったのだろう。現代美術でもよく使うやり方だが、その不気味さの根源はここにあった。一方でアウシュヴィッツを見た後は、そうしたタイプのアート作品が皮相的に見えてしまうかもしれない。

写真:上3枚=ツアーで回るアウシュビッツ博物館、左下=犠牲者の靴、右下=薬品の缶

2017/09/14(木)(五十嵐太郎)

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