artscapeレビュー

2016年06月15日号のレビュー/プレビュー

試写『幸福は日々の中に。』

[東京都]

鹿児島市内にある知的障がい者施設、しょうぶ学園の日常を描いたドキュメンタリー映画。ここの入所者は基本的になにをしてもいい。好きな絵を描いたり、手仕事をしたり、歌ったり踊ったり。ときおり登場するたけしくんは、いつも中庭にしゃがみ込んでなにかを見ているだけ。カメラを向けても気にしないし、ごはんは? と聞かれても「いらない」。ある意味で外界から遮断された楽園ともいえるのだが、ここが楽園であるのはもうひとつ、彼らがネットにつながってないからでもあるだろう。かつて施設は物理的に外界から遮断されていただけなのに、いまでは情報的にも外界と隔てられている。そしてもし彼らが外に出ても、ネットにつながる可能性は少ない。もちろんネットにつながらないから楽園の住人でいられるのだ。そう考えるとネットというのは人間を容赦なく分断し、楽園から追放し、ダメにするものだと思う。それはともかく、彼らが外界とつながるひとつの機会が、障がい者と従業員のパーカッショングループ「otto & orabu」の公演。名称どおり「音」と「おらぶ(叫ぶ)」のコーラスで即興音楽を楽しむバンドだが、これがすばらしい。

2016/05/27(金)(村田真)

TWS-Emerging 2016

会期:2016/05/21~2016/06/19

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

花沢忍、吉田裕亮、中野奈々恵の3人。前回に比べて3人とも見劣りするなあ。花沢は2階の壁に幅7メートルを超す超大作を展示した心意気は買いたいが、あまり感心するような絵ではない。吉田は灰白色を中心とする色面構成だが、おもしろい絵ではないし、中野は吹き出し、コマ割り、セリフがあってマンガっぽいが、ヘタの上塗りだし。

2016/05/27(金)(村田真)

AGC studio Exhibition No.17 U-35 Young Architect Japan. 多様な光のあるガラス建築展

会期:2016/04/21~2016/07/16

AGC studio 1階エントランスギャラリー[東京都]

京橋のAGC studioにて、昨年のU-35メンバーによる「多様な光のあるガラス建築」展を見る。今回は高濱史子の提案が最優秀賞に選ばれ、湾曲する極薄のガラスで自立する小さなパビリオンを会場内に建設していた。

2016/05/27(金)(五十嵐太郎)

写真展 映画館 映写技師/写真家 中馬聰の仕事

会期:2016/04/12~2016/07/10

東京国立近代美術館フィルムセンター[東京都]

国立近代美術館フィルムセンター「映画館」展は、映写技師/写真家の中馬聰が日本各地で撮影したあじわい深い、古い小さな映画館群を紹介する。地域のコミュニティの場となった藤井光の映画『ASAHIZA』のような場所はどこにでも存在する、という風に受けとめることができた。またフィルムセンターからも戦前の壮麗な映画館の写真を紹介する。これらは千人以上の箱も少なくないが、モダニズムやアヴァンギャルドなデザインの大衆的な需要として興味深い。

2016/05/27(金)(五十嵐太郎)

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相田武文 展

会期:2016/05/23~2016/05/29

建築家会館 大ホール[東京都]

会場の空間を大きな積み木の組み合わせで構成しつつ、1970-80年代の積木の家シリーズ、渋谷の都市建築のファサードのデザイン・サーヴェイ、「AIDA BLOCK」セット、ワークショップの成果などを紹介する。現代の風潮と違い、建築に明快な自立的形態が存在する強さを感じる。

2016/05/27(金)(五十嵐太郎)

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