2021年01月15日号
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artscapeレビュー

絵はがきの別府展

2012年12月01日号

会期:2012/11/13~2012/11/27

P3/BEP.lab(旧草本商店2階)[大分県]

大分県の別府市で行なわれている国際展「混浴温泉世界」は、じつは「別府アートマンス」というより大きな枠組みのなかに位置づけられている。これは市民による総合芸術祭で、現代アートのみならず、工芸、陶芸、書、ダンス、音楽など、さまざまな芸術ジャンルのイベントが、「混浴温泉世界」の会期に合わせて連続的かつ同時多発的に催されるのだ。
「混浴温泉世界」の作品を探して街をうろうろ歩いていると、いたるところで不意に小さな展覧会に出くわすほど、おびただしい。小規模な文化事業とはいえ、これだけ充実させている点は、横浜や妻有、愛知、神戸、瀬戸内などの国際展都市には見られない、別府ならではの大きな特徴である。
この展覧会もそのひとつ。観光都市・別府の絵はがきを、街中の共同浴場の上にある旧公民館で一挙に展示した。絵はがきに用いられた写真には、巨大な旅客船や砂風呂、外国人など、いずれも往時を偲ばせる図像が小さなフレームの中に収められている。なかでも港に停泊した巨大な旅客船の真下で砂風呂を楽しむ観光客を写した写真は、一瞬合成かと疑ってしまったほど、別府のセールスポイントを凝縮して構成されていて、その気迫と工夫がおもしろい。
別府の栄華を物語る絵はがきの数々を、その勢いを失ってしまった空間で見るという経験。その時間と空間の圧倒的なギャップに目眩がするが、「混浴温泉世界」とは異なるさまざまな水準が設けられ、いろいろな角度から別府に想像力を働かせることができるようになっているところに、アートの大きな意味を見た。

2012/11/20(火)(福住廉)

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