2021年01月15日号
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artscapeレビュー

TAT Performing Arts Vol. 1(Abe "M"ARIAほか)

2012年12月01日号

会期:2012/11/04

TRANS ARTS TOKYO(旧東京電機大学11号館)[東京都]

神田の街に「神田コミュニティアートセンター」をつくるためのプロローグとして開催されたTRANS ARTS TOKYO。このアートイベントの一環で「吾妻橋ダンスクロッシング」やSNACでおなじみの桜井圭介がキュレーションしたのがこの「TAT Performing Arts Vol. 1」。11月25日にはVol. 2も行なわれた(筆者は未見)。本イベントでは三組(Abe "M"ARIA、core of bells、危口統之[悪魔のしるし])が出演したが、冒頭に出演したソロダンサーのAbe "M"ARIAによるパフォーマンスが強烈だった。彼女は、いわゆるコンテンポラリー・ダンスの枠で括られることの多いダンサーで、10年以上単独公演や路上パフォーマンスを行なってきた。パンキッシュな下着姿で猛烈に速く腕や脚や胴体をやや痙攣気味に動かすさまは、10年以上前に筆者が初見したときから一貫している。その速さや強さ、また古い大学校舎の扉を蹴飛ばしては舞台となる教室を出たり入ったりするその暴力的な雰囲気もさることながら、際立っていたのは、観光地の猿の如く観客の頭を突っついたりするといういわゆる観客へのいじりだ。ラストシーンでは、観客のめがねを次々と奪っては戦利品を鑑賞するように床に並べたり、身につけてみたりし、観客の爆笑を得ていた。得体の知れない怪物のような存在が観客をいじる。その傍若無人な様子が痛快といえば痛快。彼女の前では黙ってなされるがまま、観客は石となる。ただし、解散が予定されているバナナ学園純情乙女組が観客にわかめや豆腐や水を投げかけ、舞台と観客をスープのように混沌化してしまうパフォーマンスを知っているいまとなっては、そのコンタクトは舞台/客席間を侵犯する激しさよりも、〈無鉄砲な女の子の暴走〉という日本のコンテンポラリー・ダンスらしいイメージの枠内に収まってしまっていると感じないわけにはいかない。そもそも、コンタクトを通してなにをしたかったのだろう。暴走する異物として観客とのディスコミュニケーション状態を出現させたかったのか、しかし、その結果は、そのパフォーマンスが観客に対して他者への気づきを喚起するというよりも、〈ちょっと困ったコがいる(不思議ちゃん?)〉として括られてしまうだけのような気がしてしまった。ぼくもいじられた1人だった。一番派手にいじられた。ただいじられるのがいやでわざとこっちから体をくっつけてみたり、声をかけてみたりとこっちもいじろうとしたからだ。けれども、どうあがいても、彼女のパフォーマンスのための客体にしかなれないと思わされ、寂しい気持ちになった。

2012/11/04(日)(木村覚)

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