2021年01月15日号
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artscapeレビュー

スイス・デザイン賞 展

2012年12月01日号

会期:2012/11/06~2012/11/18

スパイラルガーデン[東京都]

「スイス・デザイン賞」は、1991年に創設され、隔年で開催されているスイス現代デザインのコンペティション。日本での海外巡回展は2010年に次いで2回目で、今回は2011年度の受賞作が紹介された。LED電球の新しい形、テキスタイルデザイン、組み立て式の椅子、ダイビング器材や自転車などのスポーツ用品、調理器具、トラック幌をリサイクルしたメッセンジャー・バッグで知られているフライターグの展示用什器や製品プロジェクトなどを見ることができた。実体のあるプロダクトが展示の中心となるなかで、マーケット部門賞を受賞したNPO団体のプロジェクト《シニア・デザイン・ファクトリー》がとても興味深い。活動の趣旨は、高齢者と若者とのあいだのジェネレーションギャップをデザインという行為を通じて埋めていこうというもの。高齢者との関わりというと、ボランティア的な活動をイメージしてしまうが、《シニア・デザイン・ファクトリー》はワークショップを通じて相互にものづくりを学び、その結果を正当な対価を得られる製品へと仕上げる。たとえば高齢者が料理のレシピや手描きのイラストをつくり、編み物の技術を教える。若者は高齢者にコンピュータの使いかたを教えたり、新しいデザインによって、彼らの技術から売れるプロダクトをつくる。当初オンラインで販売されていた製品は、その後開設されたショップでも販売されるようになり、2011年10月にはカフェもオープン。今後彼らはこのプロジェクトをヨーロッパ各国でフランチャイズ展開することも考えているという★1。ただ古い技術にデザインを持ち込むだけではないく、つくり手のしあわせと製品の使い手との関係、製品の販路までをも視野に入れたこの優れたプロジェクトは、世代間をつなぐばかりではなく、地場産業とデザイン、伝統工芸とデザインとの関係にも示唆を与えるものではないだろうか。[新川徳彦]
★1──「高齢者と若者が集う場、チューリッヒに生まれたシニアデザインファクトリー」(『AXIS』Vol. 157、2012年5月、74~77頁)。

2012/11/07(水)(SYNK)

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