2021年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ウルトラ005」[オクトーバー・サイド Oct. side]

2012年12月01日号

会期:2012/10/27~2012/10/30

スパイラルガーデン[東京都]

典型的な現代アートの見本市だが、会場でひときわ異彩を放っていたのは、「ヴォルカノイズ」の伊藤誠吾。拠点としている秋田の各地で繰り広げたパフォーマンスの映像と、それらを見せる小さな空間を幼少時の写真や当時獲得した表彰状などによって構築した。
いずれもバカバカしいテーマをひたすらバカバカしく追究しているところがまたバカバカしいが、その一方で安易に他者との関係性やコミュニケーションをねらわない潔さが清々しい。なかでもビデオカメラを無言のまま、ただひたすら目前の相手に向け続け、顔面をクローズアップで撮るだけの映像作品は、被写体とさせられた人が笑顔の隙間に一瞬垣間見せる不快感やわずかな攻撃性をあぶり出す傑作だが、しだいにビデオカメラという暴力装置の(というより、正確にはそれを駆使する伊藤自身の)不気味な迫力に、映像を見る側がいたたまれない気持ちになってくる。難癖をつけるチンピラの視線に同一化してしまったような居心地の悪さを感じてならないのである。
これだけ映像作品が氾濫している昨今、幸福なコミュニケーションをねらう映像は数あれど、これほど挑発的でこれほど悪意の込められた映像はほかにない。しかし、人間のコミュニケーションがディスコミュニケーションとつねに表裏一体の関係にある、きわめて危ういものだとすれば、伊藤の挑戦的な映像は、私たちのコミュニケーションを裏側から鋭く突き刺す鋭利な刃物なのだろう。その類まれな鋭さを評価したい。

2012/10/30(火)(福住廉)

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