2022年07月01日号
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artscapeレビュー

三重の街並み

2022年06月15日号

[三重県]

実は昨年、初めて立ち寄ったのだが、その際はあまりにも滞在時間が短く、江戸から明治時代にかけて約200軒の町屋が連なる全体を見たかったので、東海道47番目の宿場町だった三重県の「関宿」を再訪し、約1.8kmの関宿の街道を往復した。もちろん、ここは重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。さわやかな空間の主屋が残る《関の山車会館》、上階において街並みの変化を連続写真で展示する元町屋の《関まちなみ資料館》、大規模な《関宿旅籠玉屋歴史資料館》も、それぞれ良かったが、これだけの長い距離で、古い建築群が続く街並みを保存、もしくは修景しているのは本当に画期的だ。大室佑介が内部のリノベーションを手がけたピザ屋も、外観は一切手を加えられないように、街並みのファサードは厳密にコントロールされている。



関宿の街並み



関の山車会館の主屋



旅籠玉屋歴史資料館の2階



大室佑介によるリノベーション


初の松坂市は、有名な現代建築は存在しないが、古い建築がよく残っていた。そこで、まず赤い壁が目立つ「松阪工業高校資料館」(旧三重県立工業学校製図室)(1908)、モダンな《中井珠算簿記学校》、レンガ造の《松阪市文化財センター(旧カネボウ綿糸松阪工場綿糸倉庫)》(1923)などの近代建築をまわった。城跡内にある「松坂市立歴史民俗資料館」は、明治期の旧図書館を改造したものであり、松坂商人と日本橋の関係を学ぶ。二階の《小津安二郎松坂記念館》では、映画『秋刀魚の味』の家屋模型も展示されている。すき焼きで知られる「牛銀本店」は昭和初期の建築であり、ちょうどお昼だったので、横の洋食棟のランチを食べることができた。約1時間待ちになったが、近くの古い街並みを散策していれば、まったく苦にならない。



松坂市立歴史民俗資料館



牛銀本店


特に良かったのは、殿町や魚町である。個別の建築としては、小さい武家屋敷を増築した「原田二郎旧宅」、圧倒的にユニークな近代和風の意匠に感心させられた豪商「旧長谷川治郎兵衛家」、そして現代の公共施設に通じる空間の構成が巧みな《旧小津清左衛門家》などが秀逸だった。これらのパンフレットの解説ではほとんど触れられていなかったが、いずれも建築的な面白さをもっとアピールしたら良いのに、と思う。また城跡に近い、石畳の両側に武家屋敷が並ぶ、江戸時代の「御城番屋敷」は、復元かと思いきや、現存する古建築であり、しかも武士の子孫が今も居住し、実際に暮らしていることに驚かされた。関宿の街並みもそうだったが、まさに生きた文化財である。



旧長谷川治郎兵衛家



旧小津清左衛門家

2022/05/05(木)(五十嵐太郎)

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