artscapeレビュー
沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
2022年06月15日号
会期:2022/05/03~2022/06/26
東京国立博物館 平成館[東京都]
今年は沖縄県が復帰50年を迎える節目の年である。本展はそれを記念した展覧会なのだが、「琉球」というタイトルのとおり、スポットを当てているのはそのルーツである「琉球王国」だ。琉球王国について詳しく知っている人はどのくらいいるだろうか。正直、私はほとんど何も知らなかったということを本展で知らされた。琉球王国は1429年から1879年まで存在した。日本では室町時代から江戸時代までにあたる。
本展の第1章で《東インド諸島とその周辺の地図(『世界の舞台』)》という16世紀の地図が展示されていたのだが(※5月29日に展示終了)、それを見て愕然とした。当時、世界の目から見ると、日本よりも琉球王国の方が存在感が大きかったことを示していたからだ。なぜなら琉球王国は中国をはじめ、日本、朝鮮半島、東南アジア諸国との貿易によって発展した海洋王国だったためだ。まさにアジアの架け橋として外交に長けていた一方、国内では高度な手業による種々さまざまな工芸品が発達した。絵画、木彫、石彫、漆芸、染織、陶芸、金工などがあるなか、私がもっとも目を奪われたのは漆芸だ。螺鈿や沈金、箔絵などで細やかに加飾された豪華絢爛な箱や盆、卓などが展示されており、かつての華やかなりし王家の暮らしを彷彿とさせた。当時、中国から最先端の工芸品類を輸入していた背景もあり、相当、目が肥えていたのだろう。王国内で豊かな文化が醸成されていたことを伝えていた。
そんな琉球王国の象徴とも言える首里城の再建や文化遺産の復元作品で本展は締められていたが、観覧後、なんだか夢から覚めたような気分になる。日本の明治政府によって琉球王国が沖縄県になってからというもの、ずっと困難や苦難の連続だったのではないか。我々はむしろ、そちらの現実の方を知っているからだ。琉球王国にかつて存在した高度な手業はいったいどこに消えたのか。日本はその貴重な文化や産業の多くを彼らから奪ってしまったことをもっと知るべきである。そんな複雑な思いに駆られた展覧会だった。
公式サイト:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/
2022/05/28(土)(杉江あこ)