2022年12月01日号
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artscapeレビュー

アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真

2022年06月15日号

会期:2022/05/20~2022/08/21

東京都写真美術館3階展示室[東京都]

日本の1930-40年代の写真の動向にスポットライトを当てた展覧会が、ここ数年、相次いで開催されている。福岡市美術館の「ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画」(2021)、名古屋市美術館の「『写真の都』物語 —名古屋写真運動史:1911-1972—」(2021)などがそうだが、東京都写真美術館でも2018年の「『光画』と新興写真 モダニズムの日本」展に続いて本展が開催された。

欧米のモダニズム的な写真の傾向を積極的に取り上げた「新興写真」は、やや「直訳模倣」の面があり、昭和10年代(1935~)になると、早くも「行き詰り状態」を呈する。それに代わって、シュルレアリスムやアブストラクト(抽象)絵画の影響を取り入れつつも、日常の中に潜む魔術的、幻想的な要素を写真本来の描写力を用いて明るみに出そうとする「前衛写真」が、大阪(関西)、名古屋、福岡、東京などで花開くことになる。本展には安井仲治、小石清、河野徹、本庄光郎、平井輝七(以上、大阪)、坂田稔、山本悍右、後藤敬一郎、田島二男(以上、名古屋)、高橋渡、久野久、許斐儀一郎(以上、福岡)、瑛九、永田一脩、恩地孝四郎(以上、東京)などの作品が並んでいた。「前衛写真」の発想の源となった、同時代のヨーロッパの写真家たちの作品も含めて、これだけの質量の仕事を一堂に会するのはめったにないことなので、それだけでも貴重な機会といえる。

ただ、そこから何か新たな方向性が見えてくるかといえば、そうでもなかった。準備期間が短かったこともあり、やや総花的な顔見せ展になってしまったことは否定できないだろう。今後はその前史といえる「新興写真」、さらに戦後における展開と見るべき1950年代の「主観主義写真」も含めて、より包括的な枠組みの展示が必要になってくるのではないだろうか。

関連レビュー

「写真の都」物語 —名古屋写真運動史:1911-1972—|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2021年04月01日号)
ソシエテ・イルフは前進する 福岡の前衛写真と絵画|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2021年03月01日号)
『光画』と新興写真 モダニズムの日本|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2018年04月15日号)

2022/05/19(木)(内覧会)(飯沢耕太郎)

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