artscapeレビュー

石原悦郎への手紙 PartⅡ-AIRMAIL-

2022年06月15日号

会期:2022/04/02~2022/05/14

ZEIT-FOTO Kunitachi[東京都]

ツァイト・フォト・サロンのオーナー、石原悦郎は、2016年に亡くなった。それにともなって、日本で最初の写真専門の商業ギャラリーとして1978年にオープンしたツァイト・フォト・サロンも、40年近い歴史を閉じた。だが、同ギャラリーの旧スタッフを中心に、東京都国立市の石原の自宅を拠点として、ZEIT-FOTO Kunitachiの活動が継続している。石原が遺した写真、絵画、クラシック音楽レコードのコレクションの整理、保存のほか、1年に2~3回のペースで、展覧会も開催してきた。今回の「石原悦郎への手紙 PartⅡ-AIRMAIL-」展は、2018年に開催した「石原悦郎への手紙─世界の写真家(アーティスト)から─」に続く企画である。

出品者の顔ぶれが興味深い。写真家では渡辺眸、鷹野隆大、尾仲浩二、井津建郎、楢橋朝子、郷津雅夫、安齊重男、柴田敏雄、オノデラユキらが出品している。ロバート・フランク、ビル・ブラント、ベルナール・フォコンの名前も見える。作品の近くに掲げられた石原宛の「AIRMAIL」の書簡やポストカードと併せて見ると、彼らと石原との緊密な関係、作品制作に取り組むときの影響の強さが伝わってくる。ツァイト・フォト・サロンのコレクションがどのように形成され、作家同士の関係がどう育っていったかが見えてきて、あらためてギャラリストとしての石原悦郎の存在の大きさを感じることができた。柴田敏雄の極めて珍しい「静物写真」など、思いがけない作品も出品されている。ZEIT-FOTO Kunitachiには、まだ写真600点、絵画700点が残っているのだという。これから先も、いろいろな切り口の企画展が考えられるのではないだろうか。

2022/05/13(金)(飯沢耕太郎)

2022年06月15日号の
artscapeレビュー