2022年07月01日号
次回7月15日更新予定

artscapeレビュー

岸幸太「Vietnam Street」

2022年06月15日号

会期:2022/05/17~2022/06/04

photograpers’ gallery[東京都]

岸幸太は、長期にわたって撮影していた釜ヶ崎、山谷、寿町などの「ドヤ街」の人とモノの写真群をまとめた大作『傷、見た目』(写真公園林、2021)を写真集にまとめてから、photograpers’ galleryで、カラー写真による「連荘」シリーズを発表し始めた(2021年7月、2022年1月)。だが、2017年からは、「Vietnam Street(ベトナム通り)」と題するもうひとつの写真シリーズにも取り組んでいる。

「ベトナム通り」といっても、ベトナムで撮影しているわけではない。「ベトナム通り」とは、沖縄本島の嘉手納基地を貫くように走る、沖縄市道知花38号の通称である。週末には道にフリーマーケットの露店が並び、ベトナムの街路を彷彿とさせるのでそう呼ばれるようになった。道の片側には基地のフェンスがあり、黙認耕作地と呼ばれる農地も広がっている。とはいえ、岸はこの道の特異性を強調して撮影しているわけではない。牛舎、豚舎、産業廃棄物処理工場、自動車関連工場などもある、そのどちらかといえば殺風景な光景は、むしろ日本のどこにでも見られるもののようだ。

会場には、横位置のカラー写真31点と、大判プリントに引き伸された黒白印画3点が淡々と並んでいた。このような素っ気ない撮り方の写真を積み重ねていくことで、厚みのある視覚的なアーカイヴが形をとっていくのではないかと思う。ある意味では日本の風景の縮図ともいえる「Vietnam Street」が、どのような眺めに組織されていくのかを、もう少し長いスパンで見てみたい。

関連レビュー

岸幸太「連荘 1」|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2021年09月01日号)
岸幸太『傷、見た目』|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2021年06月01日号)

2022/05/20(金)(飯沢耕太郎)

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