artscapeレビュー
Chim↑Pom展:ハッピースプリング
2022年06月15日号
会期:2022/02/18~2022/05/29
森美術館[東京都]
結成から17年、日本を代表するアート・コレクティブとして名を馳せているChim↑Pom from Smappa!Group
の「最大の回顧展」が、森美術館で開催された。都市と公共性、ヒロシマ、東日本大震災、戦争、移民問題など多彩なテーマを扱い、メキシコとアメリカの国境地帯、カンボジアまでも足を伸ばして、挑発とユーモアがないまぜになったパフォーマンスを縦横無尽に展開し、それらを映像を含めた総合的な現代アートとして提示する彼らの活動が、まさにコレクティブに集成された見応えのある展示である。それらを見ながら、あらためてプロジェクトにおけると写真・映像の役割について考えさせられた。いうまでもなく、アーティストたちのパフォーマンスは一回限りのものだから、その場にいた者以外の観客にそれを伝えるためには、写真や動画で記録しておく必要がある。逆にいえば、写真・映像こそが、その作品を成立させるために決定的な役割を果たすといえる。Chim↑Pom from Smappa!Groupはそのことをよく理解しており、展示されていた写真・映像のクオリティはとても高い。誰がそれらを撮影したのかは明記されていないが、たとえば彼らの活動を広く認知させた《ヒロシマの空をピカッとさせる》(2009)の写真・映像の強度はただならぬものがある。「May, 2020, Tokyo」(2020)では、「青写真の感光液を塗ったキャンバスを都内各所の大型看板に2週間にわたって設置」するという手法を用いて、まさに写真作品としかいいようのない大判プリントを制作・発表した。彼らの活動を写真家のそれとして捉え直すこともできるということだ。
ひるがえって、写真の分野でChim↑Pom from Smappa!Groupに匹敵する活動を展開している者がいるかといえば、Spew、二人、Culture Centreなどのユニットと、個人の制作作業とを両立させてきた横田大輔くらいしか思い浮かばない。写真家たちによるアート・コレクティブの動きが、もっと出てきてもいいのではないだろうか。
2022/04/14(木)(飯沢耕太郎)