artscapeレビュー
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2022
2022年06月15日号
会期:2022/04/09~2022/05/08
京都府京都文化博物館 別館ほか[京都府]
このところ、コロナ禍もあって秋に会期を移していた「京都国際写真祭」が、ようやく通常通り4~5月に開催された。今回で10回目ということだが、前回からあまり間がなかったということもあり、華やかな印象はあまりなく、小さくまとまったイベントになった。
ギイ・ブルダン「The Absurd and The Sublime」(京都府文化博物館別館)、イサベル・ムニョス×田中泯×山口源兵衛「BORN-ACT-EXIST」(誉田屋源兵衛 黒蔵・奥座敷)、アーヴィング・ペン「Irving Penn: Works 1939-2007. Masterpieces from the MEP Collection」(京都市美術館別館)、奈良原一高「ジャパネスク〈禅〉」(両足院[建仁寺山内])など、それぞれしっかりと組み上げられた、クオリティの高い展示だったが、新たな展開が見えるというわけではない。
唯一、意欲的かつ刺激的なラインナップだったのは、細倉真弓、地蔵ゆかり、鈴木麻弓、岩根愛、殿村任香、𠮷田多麻希、稲岡亜里子、林典子、岡部桃、清水はるみが出品した「10/10 現代日本女性写真家達の祝祭」(HOSOO GALLERY)である。女性写真家たちを顕彰する「ウーマン・イン・モーション」プログラムの支援を受け、京都国際写真祭の共同創設者のルシール・レイボーズと仲西祐介、そして写真史家でインディペンデント・キュレーターのポリーヌ・ベルマールがキュレーションしたグループ展で、写真家たちの創作意欲を的確なインスタレーションに落とし込んだ充実した内容だった。
ただ、出品作家の表現の方向性があまりにもバラバラであり、なぜ、いま「現代日本女性写真家」という括りで写真展を企画するのかという意味づけも明確とはいえない。「複数の形態を持つ強く官能的な感情」を表出する殿村仁香「焦がれ死に die of love」と、父の死をきっかけに彼の故郷の村の祭事を撮影した地蔵ゆかり「ZAIDO」とを同居させるのは、やや無理があるのではないだろうか。とはいえ、東北の桜と伝統芸能とを撮影して震災とコロナ禍を結びつけようとする岩根愛の「A NEW RIVER」、北朝鮮に渡った日本人妻を丁寧に取材した林典子「sawasawato」の切迫感のあるインスタレーション、また、𠮷田多麻希、稲岡亜里子、清水はるみによる、これまで目にしたことがなかった新鮮なアプローチの作品を見ることができたのはとてもよかった。
「京都国際写真祭」も10回目ということで、ひとつの区切りを迎えつつある。いつも思うことだが、人選、会場、統一テーマ(今回は「ONE」)にあまり必然性が感じられないことなどを含めて、どのようなイベントにしていくのかを、もう一度再考すべき時期がきているのではないだろうか。
2022/04/29(金)(飯沢耕太郎)