artscapeレビュー
石川真生 写真展「Laugh it off!」
2009年03月15日号
会期:2009/01/30~2009/02/28
TOKIO OUT of PLACE[東京都]
奈良で地道な活動を4年間続けてきた写真ギャラリー、OUT of PLACEが東京・広尾に進出してきた。この大変な時期に思い切った決断をしたものだが、観客の入りはスタートとしては悪くないようだ。
第一弾は沖縄の“女傑”石川真生の展示である。一九七〇年代以来、体当たりで沖縄の現実に対峙し続けてきた彼女は、腎臓癌、直腸癌の手術後、セルフポートレートを撮影しはじめた。手術痕や人工肛門が生々しく写り込んだそのシリーズには、降りかかる苦難を笑い飛ばしつつ、クールに自分の体を見続けていこうという強固な意志があらわれている。近作はなんとカメラ付き携帯で撮影したセルフポートレート。そのスカスカの質感、微妙に狂った色味が、思いがけないほどリアルに、彼女の「いま」を浮かび上がらせる。
会場には1986年の「Life in Philly」(89枚)と88年の「Filipina」(48枚)の連作も、壁いっぱいにピンナップされて展示してあった。セルフポートレートとは対照的に、気持ちよく目に飛び込んでくるモノクロームのドキュメンタリーだ。米軍基地にいた黒人兵士を故郷のアメリカ・フィラデルフィアまで訪ねて撮影した「Life in Philly」、金武町の外人バーで働くフィリピン人ホステスたちを追った「Filipina」とも、石川の被写体の側に踏み込みつつ、きちんと節度を保つ姿勢がしっかりと刻み込まれている。まるで戦場カメラマンのような距離感。彼女を取り巻く沖縄の現実がそれだけ苛酷だったということだろう。
2009/02/04(水)(飯沢耕太郎)