artscapeレビュー

岡本尚子 展──遥かなる声の調べ

2009年03月15日号

会期:2009.2.10~2009.2.15

アートスペース虹[京都府]

インスタレーション、絵画の展示、パフォーマンスの行なわれる会場風景。ギャラリーに入ってすぐには、展示されているこの3点の写真の意味が解らなかったが、説明を聞いて納得。架空の作家の個展を設定し、さもその会場風景を撮影したかのように写真作品で見せているのだ。個人の内面の発露と言える表現の現場、内面という意味での他者を創り上げることで、自己と他者、その境界を考察するという岡本。写真に写っている作品や小道具もすべて、自ら制作したのだそう。それらは、他者の「再現」でもないし、かといって岡本自身が発表した表現でもない。コスプレ写真とかシュチュエーションフォトともちょっと違う。考え始めると複雑にそれらが絡み合って私の頭では整理できなくなってしまいそうになる。けれども考えるほどに興味深い。なんて器用な人なんだ。しかも、彫刻や絵画作品、パフォーマンスの状況、会場の雰囲気まですべてが極めてリアルだ。会期中、「ああ、このパフォーマンス見ました」と言った鑑賞者もいたというから面白い。内容とともに既に風格や貫禄みたいなものが感じられるので初個展というのにもとても驚いた。今後の発表が待ち遠しい。

2009/02/15(日)(酒井千穂)

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