artscapeレビュー

第37回京都嵯峨芸術大学制作展

2009年03月15日号

会期:2009.2.4~2009.2.8

京都市美術館[京都府]

嵯峨芸術大学の卒業制作展。先に見た濱野裕理の作品もあった。《この小さな世界で夏の終わりをもう一度見てみたい》というタイトルの一対の作品。風景のなかにぽつんと人物や動物を描いた作品はよくあるけれど、思い出せそうで思い出せない記憶のような、ぼんやりとしたイメージにやはり気持ちを引き摺られ、気になる。今後の活動も期待したい。この卒展会場で特にじっくりと見たのは、造形学科日本画古画研究工房の制作作品。嵯峨芸術大学にそんな学科があることも知らなかったが、岡田小百合の牧谿の《白衣観音図》(大徳寺蔵/水墨)の模写には目を見張るものがあった。保存修復などに関する学科は他の大学にもあるが、嵯峨芸術大学のこのコースの場合は調査研究レポートなどからも努力に裏打ちされた成果がうかがえて頼もしい。

2009/02/08(日)(酒井千穂)

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