artscapeレビュー

元田敬三「MOTODABLACK」

2009年03月15日号

会期:2009/02/16~2009/02/28

森岡書店[東京都]

「MOTODABLACK」というのは、元田敬三の“黒”ということだろうか? 何だか意味が分からず見に行って、なるほどと納得させられた。
写っているのは自動車やオートバイの車体の一部。「CHEVELLE」「PONTIAC」「Harley-Davidson」といったエンブレムやエンジンカバーなどが金属的な光沢を放ち、あとの大部分は漆黒の闇の中に沈んでいる。いや違う。闇そのものが輝いているというか、その黒々としたディテールが、異様になまめかしい存在感を発して迫ってくるのだ。カーマニア、メカ好きにはたまらない被写体だろう。僕にはあまりそちらの趣味はないのだが、それでもその冷ややかな物質感にはぐっと来るものがあった。元田敬三といえば、新宿二丁目から歌舞伎町界隈の路上の住人たちを、正面から捉えたスナップショットの写真家という印象が強かった。今回の新作は相当の覚悟をきめた大転換といえるだろう。“黒”の厚みと輝きを出すため、カメラはあえて大型の4×5インチ判を使っているという。気合いが入った4×5のストロボ一発撮りという意欲的な試みは、まずは成功したといえるのではないか。
なお会場では、町口覚のアート・ディレクションによる写真集シリーズ「M」の第8弾として刊行された『MOTODABLACK』(マッチアンドカンパニー)も販売されていた。シンプルですっきりした装丁・レイアウトがなかなかかっこよく、売行きも上々のようだ。展覧会はこのあと大阪のNadar OSAKAにも巡回(3月3日~15日)。

2009/02/26(木)(飯沢耕太郎)

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