artscapeレビュー
「UMUTオープンラボ──建築模型の博物都市」展
2009年03月15日号
会期:2008/07/26~2009/02/13
東京大学総合研究博物館[東京都]
数々の建築模型を集合的に展示。制作は主に東京大学、慶應義塾大学、桑沢デザイン研究所の学生。時代を問わず、さまざまな建築が模型化されていた。1/300のCCTVの巨大模型など、かなりの迫力だった。実行委員長は松本文夫。通常の建築展では、模型そのものが展示の対象物というより、原寸大の建築を展示することが出来ないので、図面や模型、プレゼンボードを通して展示がなされているだろう。しかしこの展覧会では模型そのものに焦点が当てられていた。会場にはラボデスクと呼ばれるテーブルが置かれ、複数の学生がそこで会期中も新しく模型をつくり続ける。プロの模型制作者の公開制作を行ない、ワークショップでは子どもがつくりかたを習いながら模型をつくり、スライドセミナーやレクチャーとも連動する。学生の作品も並びはじめる。つまり、これまで設計事務所のなかで閉じられていた模型制作そのものが、開かれた行為として展示されていたといえよう。一方、模型制作には時間がかかる。にもかかわらず大学や設計事務所では、場所が足りないなどの問題で、数多くの模型が大胆に捨てられる。この展覧会は、各大学が合同で制作をすることで、建築模型のアーカイブという可能性を示していたように思う。欧米には建築博物館があり、建築の社会的認知度も高いが、日本にはまだ存在していない。過去数十年、何度か議論されたにもかかわらず、まだ実現していない。しかしこのような試みが連鎖していくことによって、建築のアーカイブが積み重なっていくことは間違いないだろう。その意味で、重要な展覧会だったのではないだろうか。制作された模型群は、別の場所に保管されるという。
2009/02/12(木)(松田達)