artscapeレビュー

堀越裕美「世界のはて LITTORAL DU BOUT DU MONDE」

2009年03月15日号

会期:2009/02/04~2009/02/17

銀座ニコンサロン[東京都]

堀越裕美も、文化庁の芸術家海外留学制度で2005年から2年間フランスに滞在したことが飛躍のきっかけになった。とかくいろいろ問題点が指摘されることの多い制度だが、作家本人の成長の曲線とうまくフィットすると、実り多い刺激になることも多いということだろう。
堀越は1968年生まれ。92年に東京綜合写真専門学校を卒業し、96年に個展「海のはじまり」(フォト・ギャラリー・インターナショナル)でデビューした。99年に同じギャラリーで開催した「海のはじまり2」も含めて、しっかりとした画面構成力とプリントの能力は卓越したものがあったが、とりたてて印象に残る仕事ではなかった。ところが今回の展示では、表現に柔らかみが出てくるとともに、彼女の作品世界が確立しつつあるように感じる。
タイトルの「LITTORAL DU BOUT DU MONDE」というのは、フランス・ブルターニュ地方の最西端に実際にある地名である。ヨーロッパの中心部から見れば、そこはまさに文明の果つるところだったのだろう。だが堀越は、波と砂と光と霧の、何とも茫漠とした風景を細やかに描写するだけではなく、そこに人間たちの姿を点在させている。彼らは風景に溶け込みながら、何かしら微かな身振りで自分たちの存在を主張しているように見える。つまり「世界の終わり」はそこで「世界のはじまり」の場所に転化しようとしているようにも思えるのだ。
そこから見えてくるのは、単純なペシミズムでもロマンティシズムでもない、自然と人間の新たな関係を構築するという意志なのではないだろうか。この大きなテーマが、今後堀越の中でどんなふうに動いていくかが楽しみだ。

2009/02/13(金)(飯沢耕太郎)

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