artscapeレビュー
森末由美子 展「無重力で右回り」
2009年03月15日号
会期:2009.2.24~2009.3.19
Gallery Hosokawa[大阪府]
京都市立芸術大学の学内展で作品を見て「アジシオの人」と覚えてしまった森末由美子。そのときに入手したDMのデザインはすっきりしていたけれど、タイトルのインパクトが強く、訪れる前の日から「無重力で右回り」という言葉が呪文のように頭のなかを巡って楽しみだった個展。古い本を削ったインスタレーション、調味料の瓶のシリーズの展示のほか、今展では、シルクスクリーンを重ねた絆創膏など、旧作も展示。学内展にあったファー生地の作品は、裏から表側に毛を引き出してボーダー状にしたものだとここで聞いて、なるほどとようやくその面白さを理解した。日常的に目にする物質の表面を削ったり、剥ぎ取ったり、ひっくり返したりと、日頃われわれが措定している存在の意味を少しずつ、ゆっくりと曖昧にしていく森末の制作は、とても丁寧でまるで職人仕事のよう。発表しているのは立体作品だが、版画を学んでいたという点も納得。また見たい。
2009/02/27(金)(酒井千穂)