2019年10月01日号
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artscapeレビュー

2011年12月01日号のレビュー/プレビュー

mariane個展「人肌/body warmth」

会期:2011/11/12~2011/12/17

studio J[大阪府]

和紙にアクリルガッシュで生き物のような形態を描くmariane。描かれた形態は海の軟体生物や菌類を思わせるものがあり、一種毒々しい色合いもあって、爛熟した色香を漂わせている。新作は画面構成に大きな変化があり、タッチも一層細密になっているのが特徴だ。よりスケールの大きな世界を表現できそうなので、今後は襖絵のような大作に挑んでもよいかもしれない。

2011/11/12(土)(小吹隆文)

大島成己 展「緑の触覚─haptic green」

会期:2011/11/05~2011/12/03

ギャラリーノマル[大阪府]

DMを見た第一印象は、雑木林を撮ったありふれた写真。しかし、大島がそんなストレートフォトを撮るわけがない。会場で実物に接して驚いた。ひとつの風景のなかに複数のパースペクティブが混在する、不思議な質感を持った情景が撮られているのだ。作家本人にうかがったところ、本作は一定の距離からアップで撮った画像をコンピューターで何百枚も繋ぎ合わせたもので、一種触覚的な視覚体験を誘発させる仕組みを持っているのだという。これまでも視覚を巡るさまざまな考察を行なってきた大島らしい、曲者の作品を楽しんだ。

2011/11/12(土)(小吹隆文)

柏木博『デザインの教科書』


出版者:講談社
出版日:2011年9月
価格:756円、221頁


デザイン評論家・柏木博の「デザインについて、制作者の視点からではなく、使い手つまり受け手の側から見ることをテーマにしている」最新刊。著者によるこれまでの論述の総論的内容の「教科書」でありながら、今日的な新しい観点も加味されている。はじめに、「デザイン」を考えるためのいくつかの視点──「心地良さという要因」「環境そして道具や装置を手なずける」「趣味と美意識」「地域・社会」──が提示され、これらのキーワードが各章に敷衍されている。なかでももっとも興味深いのが、第4章「シリアスな生活環境のためのデザイン」および第5章「デザインによる環境問題への処方」であろう。「ソーシャル・デザイン」「環境デザイン」「コミュニティ・デザイン」などの言葉がますます注目される現在、とりわけ3.11を経験した私たちにあっては、この領域に関するより具体的な記述を今後期待したいところだ。本書では、互いの章や各記述が連関しあって「デザイン」の歴史的展開やその重層的な意味が浮かび上がるという形式はとられてはいない(例えば、最後の第8章はデザイン・ミュージアムの事例について記述されている)。雑誌連載の著述に加筆されたため、著者の関心事に応じて構成されているからだ。とはいえ、本書に述べられている通り、「もう少し柔らかく、デザインをどういう視点から見ればいいか」を知りたい読者には最適の書である。[竹内有子]

2011/11/13(日)(SYNK)

ジェローム・ベル『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』(The Show Must Go On)

会期:2011/011/12~2011/11/13

彩の国さいたま芸術劇場大ホール[埼玉県]

始めから終わりまでポップソングが流れ続け、曲のタイトルにちなんだ行為を曲毎にパフォーマーたちが一斉に行なうというきわめてミニマル(アート)な作品。真っ黒な舞台空間の真ん中に曲のタイトルを表示する白いバーがある様子は、フランク・ステラの「ブラック・ペインティング」を連想させる。この作家がかなりコンサヴァティヴなモダニストだと憶測せずにはいられなくなる。淡々と曲が変わり、その度に情景が変化する。そうしてつながる展開は、いわゆる物語ぬきに、場面をドラマティックにする。「Let's Dance」がかかればパフォーマーたちは踊り出し、「Into My Arms」がかかれば抱き合う。「Private Dancer」は音響スタッフひとりが舞台で踊ることをうながし、「Killing Me Softly」は全員が静かに倒れゆくシーンを牽引する。うまい。観客も仕掛けに乗せられ、ときおり手拍子が起こる。「曲のタイトルに動機づけられ行為が決められる」という自己言及的なルールは、道理があり無駄がない、故に説得力がある。ただし、それだけか、という気にもさせられる。「ミニマル・アート」によくある空虚感に似ているとでもいおうか。できたら、どこか狂気じみていてほしいと思う。とても優等生的で、いやらしい。日本で集めた多様な出自のパフォーマーたちはただルールを遂行する「駒」でしかなく、どう自分勝手に踊ってみてもそれは「〈踊る〉というルールの具現化」としか映らない。どんなルールも実行しないわけにはいかない存在故のかわいさをパフォーマーから感じることはあるにしても。

ザ・ショー・マスト・ゴー・オン

2011/11/13(日)(木村覚)

陶画塾 展

会期:2011/11/15~2011/11/20

ギャラリーマロニエ[京都府]

陶画塾という画塾があるのかと思いきや、それは若手陶芸家達が絵付けを勉強するために開いている勉強会のことだった。本展では同塾で制作された絵が展示されているのだが、これがめっぽう面白かった。有名な絵付けの模写や、実際の絵付けを前提とした下絵ばかりでなく、独立した絵画作品も多数あり、極めてバラエティに富む絵画展となっているのだ。作品はどれも墨絵で、書き初めで用いられる縦長の半紙に描かれている。それらが展示室の壁面を2段重ねで埋め尽くしているさまは、まさに圧巻。まるで新ジャンル誕生の瞬間に立ち会っているかのようだった。

2011/11/15(火)(小吹隆文)

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