artscapeレビュー
2015年03月01日号のレビュー/プレビュー
プレビュー:PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015
会期:2015/03/07~2015/05/10
京都市美術館、京都文化博物館、京都芸術センター、堀川団地(上長者町棟)、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店[京都府]
京都市美術館と京都文化博物館を主会場に、京都市内の7会場で開催される大規模なアートイベント。河本信治(元京都国立近代美術館学芸課長)が芸術監督を務め、蔡國強、サイモン・フジワラ、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、笠原恵実子、森村泰昌、ピピロッティ・リスト、田中功起、ヤン・ヴォー、やなぎみわなど約40組のアーティストが参加する。あえて統一テーマを設けず、現場で自律的に生成されるサムシングに重きを置いているのが特徴で、昨今流行りの地域型アートイベントとは明らかに一線を画している。また、会期中に市内の美術館、ギャラリー、アートセンター等で行なわれる展覧会や企画と幅広く連携しているのも特徴で、3月から5月初旬にかけての京都は、「PARASOPHIA」を中心としたアートのカオス的状況になるはずだ。
2015/02/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:Exhibition as media 2014 phono/graph ─音・文字・グラフィック─
会期:2015/03/21~2015/04/12
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
「音・文字・グラフィック」の関係性の研究と、それを取り巻く現在の状況を検証しながら形にすることを目的とするプロジェクト。2011年にdddギャラリー(大阪、現在は京都)で第1回の展覧会が行われ、その後、ドイツ、名古屋、京都、東京での開催を経て、この度の神戸展となった。今回は神戸アートビレッジセンターが有するシルクスクリーン工房の機能を生かした展開が披露される予定だ。参加作家は、鈴木大義、城一裕、藤本由紀夫、八木良太、ニコール・シュミット、intext、softpadの7組。なお本展は、神戸アートビレッジセンターとアーティストが企画立案から実施までを協働する展覧会「Exhibition as media(メディアとしての展覧会)」(2007年~)の今年度版である。
2015/02/20(金)(小吹隆文)
プレビュー:和歌山と関西の美術家たち リアルのリアルのリアルの
会期:2015/03/14~2015/05/10
和歌山県立近代美術館[和歌山県]
和歌山出身あるいは関西を拠点に活動する1970年代から80年代生まれの5人のアーティスト(伊藤彩、大久保陽平、岡田一郎、君平、小柳裕)の仕事を紹介する。彼らが様々な手法、素材を用いて表現する作品には、本物と偽物、日常と非日常、ミクロとマクロ、妄想と現実など対極的な要素が混在している。それらを通して我々は、現代人が抱く現実への不信感、自分という存在の不確かさ、自らの足元を見直すなど、現代における「リアル」の感覚を再考することになるだろう。
2015/02/20(金)(小吹隆文)
1950-70年代の阪神間スタイル
会期:2015/01/17~2015/04/07
神戸ファッション美術館[兵庫県]
大阪と神戸の間にある地域を阪神間と呼ぶが、海と山があり気候は温暖、文化的にも戦前から発展をしてきた土地柄。本展では、田中千代、原田和枝、上田安子、石津謙介、コシノヒロコら関西のデザイナーの作品を中心に、戦後における阪神間のファッション・スタイルが紹介されている。戦後、洋裁学校が矢継ぎ早に開校して、指導者たちは西洋の動向を取り入れてゆく。田中千代がクリスチャン・ディオールのデザインを鐘紡の生地で製品化していく試みなどの資料を見ると、当時におけるパリのファッションの影響力の大きさがよくわかる。60年代の文化的な様相をよく表わすのが、田中千代学園の創立35周年ショー「江戸からSpace Ageへ」の写真(展覧会チラシ)。江戸の紋様と60年代の未来感覚が違和感なく同居しているのが面白い。また、石津謙介のVANのアイヴィー・スタイルなど、60年代のトラッドな男性ファッションのベクトルも興味深い。同時代の広告・ポスターや化粧品等その関連資料が展示されているから、女性性と男性性の違いについて多分に実感できる。デザイナーの意気込み溢れるファッションを通じて、時代の雰囲気を感じとることができる展覧会。[竹内有子]
2015/02/20(金)(SYNK)
衣服にできること──阪神・淡路大震災から20年
会期:2015/01/17~2015/04/07
神戸ファッション美術館[兵庫県]
「3.11」からまもなく4年、また阪神・淡路大震災から20年を経た今年、神戸ファッション美術館で「災害時に衣服に何ができるか」について考えさせる特集展示が行なわれている。際立っていたのが、衣服造形家/眞田岳彦氏が手掛けたデザイン。2005年の新潟県中越地震を契機につくられた「Prefab Coat(プレファブコート)」シリーズと、震災を経験した神戸の人々にインタビューをして製品に活かした新作「Prefab Coat Rice KOBE(プレファブコート・ライス神戸)」。プレファブコートの数種のラインは、着衣だけでなく、多様な用途に対応できる衣服である。広げた見かけは一枚のビニールシートだが、その名の通り組み立て式コート。ファスナーを繋ぎ合わせればテントやプライバシーを守るパーテーションにもなる。被災者がそれを纏うことによって身を守るだけでなく、服から物を入れるバックへ変化するコートもある。ISSEY MIYAKE勤務を経て、英国の彫刻家リチャード・ディーコンの助手を務め、彫刻・造形を学んだ人らしい、造形思考が見て取れる。さらに心のケアまでも考えられている。たとえばPTSDの子どもの心を癒すパペットがポケットに準備されたコート。臨床心理士用のコートは、公にはジャケットとしても使えるが、帽子には動物の愛らしい形が模されるなど。「プレファブコート・ライス」は、日本産米を含有した半透明のシートからできている。これも道具として、寝袋や敷物になったり、寒さをしのいだりできる。かすかにお米の安らぐような香りがするから、日本人の奥深い心性まで考慮されている。もうひとつは、津村耕佑氏が手掛ける「FINAL HOME」。「家を失ったとき最後に人を守るのは服である」という考えから、ナイロン・コートにはたくさんのポケットがついている。新聞紙や布を入れれば防寒になるし、非常食や医療具など必要具を入れて避難することができる。生きるためのデザインからお互いの心を繋ぐデザインまで、衣服のもつ可能性に強く心を動かされた。[竹内有子]
2015/02/20(金)(SYNK)