artscapeレビュー
2015年07月15日号のレビュー/プレビュー
《フンデルトヴァッサー・ハウス》《クンストハウス・ウィーン》
[オーストリア、ウィーン]
《フンデルトヴァッサー・ハウス》と《クンストハウス・ウィーン》を再訪した。前者は朝からすごい観光客が集まっていた。しばしば彼はウィーンのガウディと呼ばれるけれど、個人的には「建築的」ではないと思うので、抵抗がある。クンストハウスで絵をまとめて鑑賞すると、素人的な画材のせいもあるが、アウトサイダー・アート的だ。また《クンストハウス・ウィーン》では、ちょうど川内倫子展(3/20~7/5)が開催されていた。いろいろな写真のシリーズを紹介している。建築と全然テイストは違うのだけど。数十年経って、振り返ると、ああ21世紀の初頭って、こういう感じのアートだよね、と思い出されるであろう現代とのシンクロ率が高い作品群である。
写真:上=《フンデルトヴァッサー・ハウス》、下=《クンストハウス・ウィーン》
2015/06/22(月)(五十嵐太郎)
オットー・ワグナー《ウィーン郵便貯金局》
[オーストリア、ウィーン]
竣工:1912年
オットー・ワグナーの《ウィーン郵便貯金局》は何度訪れても発見があり、素晴らしい。まさに近代が生み出した、明るく軽やかで透明な空間である。彼以外のコンペ案も閲覧できる奥の資料展示室も充実している。ところで、この建物の斜向いの建物を仰ぐと、コープ・ヒンメルブラウの《ルーフトップ・リモルディング》がちらっと見えるが、どれくらいの人が気づくのだろうか。
2015/06/22(月)(五十嵐太郎)
ザハ・ハディド《シュピッテラウアー・レンデの住宅群》
[オーストリア、ウィーン]
竣工:2005年
ウィーンでザハ建築を見学した。ひとつは廃線となり、いまは自転車専用道路となった小さな高架の上をまたぐ集合住宅である。こういう交通インフラと絡むと、彼女の本領が発揮される。このプロジェクトを企画した人の狙いどおりだろう。すぐ近くがフンデルトヴァッサーの焼却場なので、この奇天烈感のおかげで、ザハの建築が大人しく見える。
写真:上=《シュピッテラウアー・レンデの住宅群》、下=フンデルトヴァッサーの焼却場
2015/06/22(月)(五十嵐太郎)
《ウィーン経済経営大学》
[オーストリア、ウィーン]
竣工:2013年10月
もうひとつは、ウィーン経済経営大学の新キャンパスである。ザハ、阿部仁史、ピーター・クック、バスアルヒテクトゥールなど、世界から6組の建築家が国際コンペで選ばれ、万博会場のような施設群が登場していた。一番目立つのが、やはりザハの図書館で、無駄に長く歩かせるが、これが未来的な空間の体験につながる。バスは設計のほか、マスタープランも担当する。クックは橙、黄、赤などの暖色系と木製ルーバーで、相変わらず、お茶目で明るく楽しい建築だ。阿部は、蛇行する細長い空間を幾重にも並べることで、周囲の環境を読み取りながら、学科棟の内側にも街路的な空間をつくり出す。
写真:左上=エストゥディオ・カルメ・ピノス《D4棟》、左中(2枚)=ザハ・ハディド《LC棟》、左下=バスアルヒテクトゥール《D1+TC棟》、右上=CRAB・スタジオ(ピーター・クック)《D3+AD棟》、右下(2枚)=阿部仁史《D2+SC棟》
2015/06/22(月)(五十嵐太郎)
ジャン・ヌーヴェル《ソフィテル・ウィーン》/ドミニク・ペロー《DCタワー》
[オーストリア、ウィーン]
竣工:2010年/2013年
ほかにもいくつかの現代建築をまわる。ウィーンにもジャン・ヌーヴェルのソフィテルや、ドミニク・ペローの《DCタワー》が登場しており、それぞれの持ち味を出している。日本にある彼らの建築よりも、やりたいように遂行したように感じられた。ギュンター・ドメニクの新作もあったが、1970年代末の旧中央銀行がちゃんと残っているのが嬉しい。いまは鞄屋になり、内部に入りやすい。こういうぐにゃぐにゃ、現在はコンピュータのデザインとなるが、手仕事と手のドローイングでがんばってつくったのが愛おしく感じる。
写真:左上=《ソフィテル・ウィーン》、左中=《DCタワー》、左下=ギュンター・ドメニクの新作、右=《旧ウィーン中央銀行ファヴォリーテン支店》
2015/06/22(月)(五十嵐太郎)