artscapeレビュー
2009年06月15日号のレビュー/プレビュー
ル・コルビュジエと国立西洋美術館
会期:2009/06/04~2009/08/30
国立西洋美術館[東京都]
開催中の展覧会であるが、筆者がまだ見ていないことを理由に紹介が遅れてはいけない。ル・コルビュジエが設計し、3人の弟子である坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が、現場管理を担当して完成した国立西洋美術館の本館が、今年で開館50年を迎える。この本館の歴史を写真や資料によって辿る展覧会であり、その構想を検証するという。多くの関連イベントが6月から8月にかけて開かれる。山名善之、妹島和世、松隈洋、林美佐、ヨコミゾマコト各氏らの講演会(いくつかはすでに終了)、また建築ツアー、ワークショップ、コンサートなど、盛りだくさんのようである。
国立西洋美術館は、ル・コルビュジエ設計による世界各国の他の21件の建築物とともに世界文化遺産登録への推薦書が提出されており、登録されれば東京初の世界遺産となる。2009年5月に登録延期勧告を受け、最終審議は6月22日からセビリアで開かれる世界遺産委員会でなされるが、そのタイミングとも連動した展覧会であり、結果が注目される(暫定リストには既に登録されている)。なお暮沢剛巳著『ル・コルビュジエ 近代建築を広報した男』(朝日新聞出版)も6月に出版されるなど、再びル・コルビュジエへの注目が集まりそうだ。
URL:http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/corbusier200906.html#mainClm
2009/05/31(日)(松田達)
建築教育国際会議(IAES)
会期:2009/07/17~2009/07/19
東京大学工学部1号館、安田講堂、福武ホール[東京都]
展覧会ではないが、興味深いイベントということで触れておきたい。建築教育国際会議が東京大学にて開かれる。「建築教育と職能の世界標準化をどう考えるか」というタイトルがついており、UIA(国際建築家連合)が形成する建築教育のグローバルな基準と、ローカルな実践現場における教育システムとのギャップが生む軋轢についての議論のプラットフォームと、国際的な建築教育のネットワークをつくることが目的にあるという。ゲストは、阿部仁史、古谷誠章、伊東豊雄、隈研吾、難波和彦、小野田泰明、塚本由晴、山本理顕、ヘルムート・アンハイア、ニールカンス・チャヤ、プレストン・スコット・コーエン、ダナ・カフ、オディル・デックほか。これだけの充実したメンバーで3日間にわたりどのようなことが討議されるのか、非常に注目される。
URL:http://www.iaes.aud.ucla.edu/
2009/05/31(日)(松田達)
村田真 展
今月は少なめなので、おまけ情報つき。
村田真 展
会期:6月16日(火)~6月28日(日)
*10:00~18:00/会期中無休/入場無料
会場:ZAIMギャラリー(ZAIM本館1階)
主催:ZAIM(横浜市芸術文化振興財団)
キュレーター:山野真悟
2009/06/15(月)(村田真)
カタログ&ブックス│2009年6月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
「ヴィデオを待ちながら─映像、60年代から今日へ」カタログ
現代美術における映像作品の萌芽期1960-1970年代に焦点をあてた「ヴィデオを待ちながら─映像、60年代から今日へ」展のカタログ。開場に展示されたアメリカ、ヨーロッパ、日本の映像作品51点、全ての解説に加え、ロザリンド・クラウス「ヴィデオ:ナルシシズムの美学」ほか、文献3本の初邦訳を収録。
戦後民主主義と少女漫画
一九七〇年代から現在に至るまで、巨大な潮流をつくってきた少女漫画の歴史を、<純粋少女>をキーワードに読み解く。とくに“二十四年組”を中心に花開いた<少女漫画>の魅力とその高度な達成について──大島弓子の『バナナブレッドのプディング』、萩尾望都の『トーマの心臓』、そして岡崎京子の『ヘルタースケルター』を主な手がかりに──戦後文化論として読み解く。少女漫画のヒロインたちが抱える繊細な“怯え”は、大人の論理が強要する安易な成熟の拒否であり、無意識の抵抗だったのではないか。今日に至るまで連綿と受け継がれてきた“震え”や“怯え”の伝達装置としての<純粋少女>たちに、高度消費社会の諸矛盾を、戦後民主主義の限界を乗りこえる可能性をみる。巻末に「少女漫画の名作一覧」を収録。[PHP研究所サイトより]
ル・コルビュジエー近代建築を広報した男
20世紀最大の建築家と呼ばれる、ル・コルビュジエ。2009年6月現在、フランス政府は各国と連絡を図り、その建築作品の一括世界遺産登録に向け、全精力を注ぐ。その中には日本で唯一の作品、国立西洋美術館も含まれる。フランス建築界でスターダムに上り詰めたル・コルビュジエは、早くも大正期に日本に紹介され、前川國男、丹下健三ら日本を代表する近代建築家に多大な影響を及ぼした。「ドミノ・システム」「近代建築の5原則」「住宅は住むための機会」を標榜、建築同様、熱心に取り組んだメディア戦略で自らを近代化のシンボルとした巨匠。「近代建築を広報した男」ル・コルビュジエの、建築、アート、デザインの創造の軌跡を追う。[本書より]
建築家の原点─大谷幸夫 建築は誰のために
「国立京都国際会館」を筆頭に、人間と建築のかかわりを追求し続ける大谷幸夫。魂を揺さぶる建築のありようを語りつくしたインタビューと、珠玉の論考を収録。
思想地図 vol.3 特集=アーキテクチャ
東浩紀・北田暁大編集による雑誌「思想地図」第三弾。
浅田彰+東浩紀+磯崎新+宇野常寛+濱野智史+宮台真司による巻頭共同討議「アーキテクチャと思想の場所」のほか、藤村龍至、鈴木謙介、安藤馨による論考を掲載。
2009/06/15(月)(artscape編集部)