artscapeレビュー
石川雷太 展 ノイズ・テロル・サブリミナル
2011年07月01日号
会期:2011/05/20~2011/05/30
少なくとも東日本の人間にとって、いまもっとも注目している数字が放射線の線量であることは間違いない。「シーベルト」という単位はすっかり社会に定着してしまった。石川雷太は、いくつかの放射性鉱石を並べ、ガイガーカウンターでそれらの線量を計測させる作品などを展示した。暗闇の中で鈍く輝く鉱石そのものは美しいが、ガイガーカウンターを近づけると計測針がゆるやかに振れ動き、目に見えない放射線の存在を目の当たりにさせられる。試しに自分の身体に向けてみても針はわずかに振れたから、東京に暮らす者であっても、多かれ少なかれ放射線を浴びているということなのだろう。容易には知覚しがたい放射線を知覚させるだけであれば、ガイガーカウンターというテクノロジーで十分事足りる。けれども、それが紛れもなく「自然」の一部であり、しかも「美」の背後に潜んでいることを知覚するにはアートという技術を動員するほかない。得体の知れない「アートの力」を社会にむけて無闇に喧伝するのではなく、あくまでも美学の内側から現実を突き抜けようとする石川雷太の作品は、現代アートの正統である。
2011/05/26(木)(福住廉)