artscapeレビュー

佐藤晃一ポスター

2011年07月01日号

会期:2011/05/09~2011/05/31

ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京都]

グラフィック・デザイナーの佐藤晃一のポスターを紹介する展覧会。ふたつのフロアは青いグラデーションで包まれ、壁には代表的なポスター約100点、中央に置かれた台にはポスターのための印刷指定原稿が並べられている。トレーシングペーパーに書き込まれた指示の数々に「印刷のメカニズムを最大限に引き出した鮮明な色彩とグラデーションを駆使したポスター作品(展覧会サイトの解説より引用)」が生まれたプロセスを、完成作品とともにみることができる仕掛けだ。
佐藤晃一の作品は「超東洋的」と評されるという。ここで「超」がどのような意味で用いられているのか私は知らないのだが、作品を見て感じたのは、日本的、あるいは錦絵的ということである。作品とともに展示されていた指定原稿からは、錦絵同様、技術を知り、技術を使いこなし、それを独自の表現様式に高めてゆくありようを感じる。もうひとつの特徴は光の表現である。佐藤の表現には光がある。光とはいっても、光源の存在を感じさせる光ではない。たとえば夜が明ける直前、あるいは陽が沈んだ直後の、空全体に拡がるほのかな明るさとグラデーションであり、モノ自体から滲み出るアウラでもある。そして、光はあるが、影はない。光によってあらわになるのは、モノの立体的な形ではなく、輪郭である。西洋的な光と影の関係ではないのだ(もっとも、近年の作品はこれらの表現からずいぶんと離れてきている)。
興味深かったのは、同じ草月のための作品であっても、全紙のポスターに比べてB3判──おそらく電車の中吊りか、百貨店のエスカレーター脇に掲出されるもの──のもののほうが、テキストによる情報量がずっと多いこと。ポスターがはたすべき役割についての佐藤の考えかたがこの対比に現われているように思う。[新川徳彦]

2011/05/26(木)(SYNK)

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