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6.11新宿・原発やめろデモ!!!!!!!

2011年07月01日号

会期:2011/06/11

新宿一帯[東京都]

4月10日の高円寺、5月7日の渋谷に続く、「原発やめろデモ」の第三弾。3月11日からちょうど3か月のこの日、全国各地でいっせいに脱原発デモがおこなわれたが、新宿では2万人が集まり、西新宿から歌舞伎町などを3時間以上かけてゆっくりと練り歩いた。日本随一の繁華街を舞台としていたせいか、高円寺や渋谷と比べて街の反応は独特の緊張感を伴っていたが、それでも参加者たちは原発への違和感や拒絶感を路上から粘り強くアピールした。この日のデモのクライマックスは、ゴール地点となった新宿アルタ前。大量の警察官が囲い込むなか、デモの参加者も野次馬も混然一体となった群集が形成され、この広場はある種非日常的な、騒然とした空気に包まれた。ドラムサークルが絶え間なく激しいビートを刻み、アクティヴィストやミュージシャンらが車上からスピーチや音楽を披露し、それらを大勢の聴衆が熱心に聞き入っていた。学生運動やアングラ文化が盛り上がっていた頃の新宿もこんな雰囲気だったのだろうか。だからといって無法地帯と化していたわけでは決してなく、聴衆は群集ならではの熱を肌で感じながらも、きわめて冷静に集会を楽しんでいた。やがて主催団体のひとつである「素人の乱」の松本哉と山下陽光がアルタの巨大なオーロラ・ヴィジョンを指差すと、その壁面にはプロジェクターで投影された「NO NUKES」という文字が躍り、続いて日本政府への5つの要求が映し出された。すなわち、「稼働中の原発の停止」「定期検査等で停止している原発を再稼動しないこと」「原発の増設中止」「児童の許容被曝量20ミリシーベルト/年の完全撤回」「原子力発電から自然エネルギー発電への政策転換」。政治家に何も期待することができず、イタリアのように国民投票という意思表明の機会にすら恵まれていない私たちにとって、このプロジェクションはみずからの欲望や意思を重ねて投影することができる貴重な表現形式だった。この集会を締める際、司会を務めた山下陽光が「おれたちがエネルギーだ」という言葉とともに全員でジャンプすることを提案したが、これもプロジェクターと同じように集団で共有できる表現形式のひとつだった。デモだけが集団的な表現形式であるわけではない。身体や技術、言葉、音楽を動員することによって、今後も次々と新たな形式が開発されていくだろう。いまだにデモとアートを切り離す傾向があるが、ここには間違いなくアートの問題が含まれているのである。

2011/06/11(土)(福住廉)

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