2018年06月15日号
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artscapeレビュー

オフセット印刷で探るグラフィック表現の可能性──グラフィックトライアル2011

2011年07月01日号

会期:2011/05/13~2011/08/07

印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]

オフセット印刷ではなにが可能なのか。どのような限界があるのか。ふだんの仕事では絶対に経験不可能な、極端に実験的な試みをほんとうにやってしまうのが、グラフィックトライアル。なによりも、これらの実験過程がすべて記録されている点がこの企画の最大の意義である。今年は祖父江慎、佐藤可士和、名久井直子、山本剛久の四氏がそれぞれ課題を出し、凸版印刷のプリンティング・ディレクターが苦心惨憺の果て(?)にそれらを実現する。祖父江慎氏はあえて正確なコントロールができないであろう要素を印刷に持ち込む。メディウムにカレー粉を混ぜて刷ったり、フィルムをたわしでこすって傷つけたり。それでも意外にも予測不能なトラブルは起きにくく、現代印刷技術の安定性を確認することになったそうだ。佐藤可士和氏は、オフセット印刷の限界を見極め、基準をつくるという課題。同じ色を100回刷り重ねたらどのような効果が得られるのか。細い罫線、小さな文字は、どこまで再現可能なのか。インキメーカーによって金、銀、黒の色味や効果にどれほどの違いがあるのか。名久井氏は大正から昭和初期にかけて刊行された絵本のような、懐かしい印刷効果の再現を試み、山本氏は色ごとに用意した版を重ね刷りすることによって木版画のような効果を再現する。課題の選び方にそれぞれのデザイナーの個性、関心が現われていてとても面白い。オフセット印刷は私たちにとってもっとも身近で見慣れた印刷方法であるが、これほどまでに圧倒的な質感が表現可能であるのかと驚かされる。[新川徳彦]

2011/06/08(水)(SYNK)

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