新川屋酒展・ノニータの京浜ローカル1.0:artscapeレビュー|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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新川屋酒展・ノニータの京浜ローカル1.0

2012年07月15日号

新川屋酒店[神奈川県]

会期:前期/2012年4月28日~5月27日 後期/6月2日~7月1日
ノニータ(谷野浩行)という名前の響きはとても懐かしい。1991年の第1回写真新世紀の審査で、彼は優秀賞(荒木経惟選)を受賞した。ちなみに、もうひとりの優秀賞受賞者(南條史生選)だったのが、現在パリ在住のオノデラユキである。
プロデューサーの淺野幸彦の企画による今回の「新川屋酒展・ノニータの京浜ローカル1.0」は、「写真家ノニータの20年の軌跡をたどり、新作まで」を全部見せようという意欲的な展覧会だ。川崎の旧京浜工業地帯のまっただなか、駅前の立ち飲みコーナーがある酒屋さんの壁全体に写真を貼り、トークイベントや撮影会が開催された。その「ノニータのシャシンの話」という第2回目のトークにゲストとして参加したのだが、全身全霊で写真に打ち込んでいく姿勢が、以前とまったく変わっていなかったことに感動した。
懐かしい写真新世紀の優秀賞受賞作品「禅とクリムト」の実物も見ることができた。スケッチブックに、モノクロームの女性ポートレートを、一見無造作に貼り込んだものだが、「これしかない」という確信と気合いが感じられる。そのテンションの高さは、近作までしっかり保たれていて、女性のスカートの中味を驚くほど生真面目に撮影し続けた「パンモロ」のシリーズなど、ノニータ以外にはなかなか思いつかないし、実行も不可能だろう。これから先さらに大きく、「全身写真家」としての可能性が花開いてくる予感がする。
なお、会場になった南武線尻手駅前の新川屋酒店の雰囲気が最高だった。昭和の匂いが漂う雑然とした店内は、展覧会の会場として大いに活用できそうだ。ノニータ展の第二弾など、ぜひ定期的に展示やトークイベントを企画していってほしいものだ。

2012/06/03(日)(飯沢耕太郎)

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