2018年09月15日号
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artscapeレビュー

山本悍右展

2017年02月15日号

会期:2017/01/13~2017/02/18

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]

山本悍右は(1914~1987)は戦前から戦後にかけて名古屋で活動した写真家・アーティスト。詩人として出発し、1939年に坂田稔、下郷羊雄らと「ナゴヤ・フォトアバンガルド」を結成して、旺盛な創作意欲でシュルレアリスムに影響された「前衛写真」を発表していった。戦後も北園克衛が主宰する『VOU』の同人となって、詩や作品を発表するなどの活動を続けたが、生前はほとんど評価されることがなかった。
ところが、1990年代から急速な見直しが進み、国内外の美術館やギャラリーで個展が開催されるようになり、シュルレアリスムと写真との関係を語るうえで、欠かせない作家の一人と認められるようになってきている。今回のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムの個展では、代表作28点あまりが展示されていた。しかも、大部分がヴィンテージ・プリントである。これだけの規模と内容の展示が商業ギャラリーで開催されるという状況そのものが、山本悍右の作品の国際的な評価の高まりを示すものといえるだろう。
山本にとって、写真はあくまでも造形作品を制作するための手段であり、現実世界を再現・記録するよりは、モンタージュやコラージュの材料を得るために活用するべきものであった。その、ある意味ではドライで自由な写真に対するアプローチが、作品の隅々にまで貫かれているのが、むしろ小気味好く目に飛び込んでくる。今回見たなかでは、《写真に関するスリリングな遊び》(1956)、《メタモルフォーゼ》(1978)などの写真とオブジェとを組み合わせた作品や、《街に雨が降る ぼくの部屋は 破片でいっぱいだ》(1956)、《空気のうすいぼくの部屋》(同)のような、パフォーマンスをシークエンスとして構成した作品に新鮮な印象を受けた。彼の作品世界には、まださまざまな可能性が潜んでいそうな気がする。日本では、東京ステーションギャラリーでの「シュルレアリスト山本悍右」展(2001)以来、大規模な展覧会が開催されていないので、そろそろ大きな会場での展示も見てみたいものだ。
なお同時期に、タカ・イシイギャラリー東京でも、山本悍右の作品2点を含む「日本のシュルレアリスム写真」展が開催された(2017年1月14日~2月4日)。山本に加えて中山岩太、安井仲治、椎原治、岡上淑子と並ぶラインナップはかなり強力で、「日本のシュルレアリスム写真」の広がりと豊かさを実感することができた。

2017/01/21(土)(飯沢耕太郎)

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