artscapeレビュー
プレビュー:砂連尾理『猿とモルターレ』
2017年02月15日号
会期:2017/03/10~2017/03/11
茨木市市民総合センター(クリエイトセンター)センターホール[大阪府]
「身体を通じて震災の記憶に触れ、継承するプロジェクト」と題されたパフォーマンス公演。演出・振付を手がける砂連尾理は、2003年より東北地域と交流があり、東日本大震災後に避難所生活をする人々が語る言葉とその身体に圧倒された経験をもとに創作された。タイトルの「サルト・モルターレ」とは、イタリア語で「命懸けの跳躍」を意味する。非常に困難な状況を経験した人々の命懸けの跳躍=サルト・モルターレを考察し、未来に向けて生きる私たちのサルト・モルターレの模索を試みるパフォーマンス作品であるという。
市民とのワークショップを通じて制作・上演されるこの作品は、2013年に北九州で、2015年に仙台で上演された。今回、大阪の茨木公演では、市内の追手門学院高校演劇部と協働し、自身の経験にない震災の記憶にどのように触れ、想像し、語り伝えていくかが模索される。さらに、どこで誰と演じるかによって振付の意味が更新される本作の巡演するプロセスを、アーカイブするプロジェクトが同時に開始されている。参加するのは、東北で記録と継承の活動に取り組む映画監督・酒井耕とアーティスト・ユニットの小森はるか+瀬尾夏美。ダンスと記録、アーカイブが互いに創発し合う試みを目指すという。3月10日~11日には、小森はるか+瀬尾夏美による展示「二重のまち/声の跳躍」が同センター内で開催される。本公演にあたって砂連尾と制作した映像と、絵や文章による展示が行なわれる。また、3月11日には、座談会「命懸けの跳躍(サルト・モルターレ)からどんな身体・言葉に出会うのか」も開催予定。さらに、2月~3月初旬にかけて、関連プログラムとして、酒井耕・濱口竜介監督作品「東北記録映画三部作」の上映会や、「みちのくがたり映画祭」も開催される。「語ること」と「聞くこと」、「他者の記憶の継承」という困難だが切実な試みについて、言葉と身体、映像を通して多角的に考える機会となるだろう。
公式サイト:https://sarutomortale.tumblr.com/
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2017/01/30(月)(高嶋慈)