artscapeレビュー
西村正幸 展「知らずにいた記憶」
2013年07月15日号
会期:2013/06/04~2013/06/16
gallery SUZUKI[京都府]
戦争の絶えない世界への無常感とそこでいつも犠牲になる多くの子どもたちへの胸ふたがる思い、それを知ってただ立ちすくむやるせない悲しみ。そのような感情を根底にもつ西村さんの作品は、けれどまったく押し付けがましさの欠片もなく、清々しい魅力を放って、まるで足下でそっと生きる小さな植物や生き物に気づいたときの、喜びにも似た感覚を喚起する。画面の隅を飛ぶ小さな白い鳥、海に浮かぶ小舟、世界の真理とともに希望を見いだそうとするような青い画面。こちらに語りかけるようなその絵の具の青に個展を訪れるたびに打たれる。
2013/06/13(木)(酒井千穂)