2019年06月15日号
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artscapeレビュー

野村浩「ヱキスドラ ララララ・・・」

2013年07月15日号

会期:2013/06/08~2013/07/14

POETIC SCAPE[東京都]

野村浩は東京藝術大学在学中の1991年、第一回「写真新世紀」の公募に出品し、「エキスドラ」と題する作品で佳作に入賞した。僕はそのときの審査を担当していたので、その作品はよく覚えている。「ドラえもん」のバリエーションである等身大のキャラクターを、街の中に置いて撮影した写真を、白黒コピーしてコントラストを上げ、綴じ合わせた手づくり写真集だった。現実世界のリアルな描写という、従来の写真表現の枠組みからまったく外れた作品がいっせいに登場してくる時代の流れを、くっきりと指し示す作品だったことが、強く印象に残っている。
この「エキスドラ」のシリーズが、20年以上の時を隔ててよみがえった。今回の「ヱキスドラ ララララ・・・」も、現実世界をそのままストレートに描写する作品ではない。今回彼が被写体としているのは、Googleのストリートビューの画像だ。日本各地の路上の光景を、無作為に選び出し、そこに「ヱキスドラ」をシルエットで配している。基本は2体(ペア)で出現する「ヱキスドラ」たちは、たとえばラブホテルの入口にたたずんだり、「洋服の青山」の前の群衆に紛れこんだり、建築工事現場の前に列をつくったりして、その場所の持つ意味を軽やかに変換してしまう。ストリートビューはむろん仮想現実には違いないのだが、並みの都市風景写真を凌駕するようなリアリティを備えている。そこにもうひとつの仮想現実である「ヱキスドラ」たちがかぶさることで、そのリアリティがさらに増幅するように思えてくるのが興味深い。
展示にはさらに工夫が凝らされていて、会場の入口のドアとショーウィンドーには「ヱキスドラ」を配したギャラリーの建物のストリートビューの画像が、大きく引き伸ばされて飾ってあった。ストリートビューの画像を、まさにその場所に展示するというのは、なかなか面白い試みだと思う。

2013/06/09(日)(飯沢耕太郎)

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